物語

□†美女と野獣の、ロミジュリ的な恋【BL】
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売られた喧嘩に負け、辛うじて逃げてきた。その上、雨にまで降られ、濡れ鼠になった羽田野キョーヤは、明け方、なんとかマンションまで帰ってきた。


チクショー…村上組の奴等め…


挫いたらしい足を引き摺りながら、薄暗いロビーを抜けてエレベーターの到着を待つ。運よく管理人室は真っ暗で、怪我の事をとやかく言われずに済んでホッとする。
とにかく寒い。早く熱い風呂に浸かりたい。そう願いながら、到着したエレベーターに乗り込もうとした瞬間、床に倒れている男を見て、情けない事に小さな声を漏らしてしまった。

「…ひっ!」

頭から血を流し、体をくの字に曲げている男は、生きているのか死んでいるのか、目視だけでは判別がつかなかった。

「お……おい、お前…死んでンのか?」

足先でつついても、何等反応はなかった。恐らく死んでいるのだろうが、面倒事には巻き込まれたくない。だが、かと言ってエレベーターに乗らない訳にもいかず、キョーヤは込み上げる胃液をなんとか飲み下し、見えないフリをしてエレベーターに乗り込んだ。


何でこんなとこで死んでンだ?
コイツは誰だ?
一体、誰が殺ったンだ?


疑問は浮かべど、答えはない。嫌な沈黙のまま、死体を見ないよう、文字盤を見上げていた。


しかし……綺麗な顔だな…


つい、見てしまう。怖いもの見たさ、なのだろうが、死体は頭部以外に傷はないようだ。
男は多分、30前後。顔は女みたいに綺麗だった。もし目を開いたら、もっと綺麗だろうに、と思うと残念でならない。


ま、死んだら、どんな美人もお仕舞いって訳だ。


目的階にエレベーターが到着すると、薄暗い通路が左右に広がっている。その右側へ、ゆっくり足を踏み出した瞬間、自分のものではない呻き声がした。

「ぅう……」
「ひぃっ!だっ、誰だ?」

辺りを見回すと、足元で死体が動いていた。







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