浅夢物語
□息子はパパ似です
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昼下がりの日曜日、夕飯の買い物に行っていた千鶴。
右手にはマイバッグ、左手には小さくて大きな温もり。
「ただいま帰りましたー…あれ? 総司さーん? いないのかな?」
玄関を上がり、キッチンに荷物を置き、流しで仲良く並んで手を洗う。
普通にはまだまだ届かない手を、専用の椅子に上って、頑張ってごしごしと手を洗って、ガラガラうがい。
「そう君手きれいになった?」
「ぴかぴかだよぉーっ」
嬉しそうに手のひらを見せる。
「じゃあ、パパいないから、そう君ママと2人でケーキ食べちゃおうか」
「うんっ!だってパパいないもんねーっ」
「ねーっ」
椅子から降りたそう君と目線を合わせて、2人で、ねーっと笑っている。
トントン
「「 え? 」」
「君たち…僕に内緒で何の相談?」
「総司さんっ!」「パパっ!」
肩を叩かれ振り返れば、同じようにしゃがんでにっこりと笑う総司。
はい、彼は全て聞いていましたね。
「あぁ千鶴ちゃんは、僕よりそう君をとるんだね」
「あたりまえじゃん!ねぇーママっ!」
「(え゛っ)」
「そう君? いくら君でも、千鶴ちゃんは僕のものだからね」
「やだ──っ!!ママはボクのだもんっ」
「ちょっ…2人とも……」
一旦始まると千鶴でさえ仲介できない。
男同士の本気の闘いだから。
「聞き分けのないこと言ってると、鬼さん連れて来ちゃうよ?」
「!! ふくちょーっ?!!」
あっという間に青ざめる可哀想なそう君。
それをニヤリと見つめる総司。
「そしたら、石田散薬をいーっぱい飲まされて…」
「のまされて…?」
「さむ─────────い俳句を聞かされて…」
「きかされて…?」
「刀でグサッとやられ」
「ぎゃあ゛──っ!!!!パパごめんなさいっ」
「分かればいいんだよ?」
男同士の本気の闘いではなかったのか?総司。
鬼の名前を出されて怖がらない子どもがいようか、いや、絶対に、誰もいない!
ぐすんぐすんと鼻を啜りながら総司の袖を引っ張る。
「でもね、パパ」
「何? そう君」
「ママもだいすきだけどね、パパもだいすきっ」
「っ!! …あ゙ぁっ! もうっ2人でケーキ食べなよ」
息子はパパ似です
(ねぇ、そう君)
(なぁに? ママ)
(さっきパパのこと、たぶらかしたでしょ)
(えへへ、ないしょだよ?)
了