浅夢物語
□動物園に行こうよ!
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雲一つない晴れ晴れとした広い空と澄んだ空気。
これ程にない動物園日和。
「晴れて良かったですね!」
ずっと楽しみにしていた千鶴の弾んだ声が響く。
「うわ…クサ」
総司のあまりにも正直な言葉に、やっぱりみんなは来たくなかったのだと千鶴は落ち込む。
「総司っ、もう少し違うこと言えよ! 千鶴がこんなに喜んでんだから」
「うわ…誰かさんみたいな匂いがする」
ちらりと土方を見て溜め息をつきながら頭を振る。
「これでいい? 平助」
「えっ、イテッ! ちょっ、なんで俺を殴るんだよ土方さん!!」
「うるせぇ!」
土方に殴られた頭を押さえながら、ちぇっと呟いて総司背中を恨めしげに見詰める。
「すみません…わたしのせいで…」
本格的に落ち込み始めた千鶴に、慌ててフォローをするいい年した男達。
ただ2人きりで来たかったという夢が砕け散って、それぞれが敵対心を剥き出しにしていただけなのだ。
それぞれが声を掛けた後、漸く表情が明るくなる。
「じゃあ…どこから観ましょうかっ?」
「あんたの為に来たんだ」
「そうだぞ、雪村君。遠慮せずに雪村君が決めなさい」
柔和な笑顔に促され、しかも近藤に言われれば、素直に従ってしまう。
じゃあ、と口を開く千鶴にみんなは集中した。
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