浅夢物語

□鬼は…
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ピーンポーン



「総司さーん、手が離せないので出てもらえますかー?」

「はいはーい」


リビングでそう君を抱っこしていたら、こくんこくんとお昼寝を始めてしまった。

お天気も良い昼下がり。
少し肌寒いことを除けば、絶好のお昼寝日和。






ガチャ

『げっ!!』

バタンッ!!!







「ぇ?」

リビングに聞こえた、不審な音の数々。

でも、総司さんはしれっとした顔でリビングに戻ってきた。


「どなたでしたか?」

「う───ん…知らない人?」

完全に目が泳いでいて、しかも語尾がハテナマーク。


ピンポンピピンポンピポポポピピピピピピピ…

玄関のチャイムが聞いたことないほど連打されている。
ポポピピピピ…っておかしいでしょう。




「……。」

「総司さん、本当に知らない人でしたか?」

「たぶん」


もうっ!と思いながらも、そっとそう君をソファーに寝かせ、急いで玄関に行く。





ガチャ

「あっ!土方さんっ!!」

玄関には見馴れた姿の土方さん。
久しぶりの挨拶を交わした。

「久しぶりだな」

「はいっ、お久しぶりですね」

「相変わらず変わらないな、千鶴は」

「そんなこと…きゃ」

肩に馴れた重さがかかる。勿論、後ろから総司さんに抱きつかれているわけだが。


「ちょっと、僕の千鶴ちゃんを玄関で口説かないでくれます?」

「挨拶だろ」

「土方さんの目がいやらしかった」

「どこがだよっ!」


久しぶりの、全く変わっていないやり取りに、なんだか頬が緩んでしまう。





「パパぁー? ママぁー? だれかきたの?」

ごしごしと目を擦りながら現れたそう君。
この騒ぎで起きてしまったらしい。

「おっ、そう、か!」

土方さんが懐かしそうに、そう君の名前を呼ぶ。

「 !!! ふくちょーっ!??!」

目を見開いて土方さんわ見た後、総司さんを涙目で見詰めるそう君。

「パパ!!ぼくいいこにしてたのに、なんでふくちょーつれてきちゃったのっ?!!」

「おい総司!てめぇ子どもにどんな教育してんだよっ!」

「え?言うこと聞かないと、鬼さん連れてきちゃうよ、って」

「………っ総司ぃぃぃ!!」

わーっと笑いながらひょいひょいと逃げる総司さんと、きゃーと叫びながら逃げるそう君。

二人きりになった玄関で、土方さんは溜め息をついた。


「お前も大変だな」

「いえ、楽しいですから。あ、どうぞ」

そう言ってスリッパを並べてリビングへ促す。










ドアを開けてリビングに入ると…



「おにはーそと!ふくはーうち!」

「いてっ、いてぇっ!」


手当たり次第に豆を掴んでは、えいえいっと土方さんに豆をぶつけるそう君。

「そう君!土方さんにそんなことしちゃダメ!」

「だってきょう、せつぶんだよっ!」

"節分は鬼に豆をぶつける日"と、似非教育を仕込まれたそう君。


「ったく、どこの誰に似たんだか」

じろりと総司さんを睨む土方さん。

「誰ですかねぇ」

と言いながら、豆を投げ付ける総司さん。

「明らかおめぇじゃねぇかっ!!」


鬼の如く総司さんを追いかけ回す土方さん。









さっき掃除機かけたばっかりなのに…

足元には豆が大量に散乱し、大人2人の"鬼"ごっこによって粉々に砕けていた。



プッチ─────ン












「総司さん!!そう君!!土方さん!!」

「「「はいっ!?」」」

ぴたりと動きを止めた3人に、にこやかに近付く。





「ちょっとそこに正座して頂けますか?」



「「「………はい」」」




















たっぷりとお説教をした後の3人は涙目でお掃除中。



「ママがいちばんこわ…」

「そう君、それ最後まで言っちゃダメ」

「千鶴に怒られちまった…涙出そうだ…」

「鬼の目にも涙ってやつですか?」

「何だと総司っ?!」






「掃除は……終わりましたか?」


「「「まだです…」」」












鬼は…

(怒らせてはいけません)





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