浅夢物語
□動物園に行こうよ!
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「じゃあ、ゾウさんから!」
可愛い笑顔で動物をさん付けで呼ぶ千鶴に、本当に2人きりがよかったと思わずにはいられない面々。
「わぁ〜、やっぱり大きいですねっ」
柵越しにゾウに手を振りながら、熱心に見詰めている。
「パオォ─────ッ!」
鼓膜がビリビリと鳴っているような気がする程、大きな声でゾウが一声鳴いた。
「とても力強い鳴き声ですねっ」
感心したように、興奮しながら千鶴が呟くと、ピクリと反応した男が一人…。
「ぱおぉ─────っ!!」
「きゃあ!な、永倉さんっ?!」
「なんだよ新八っ!」
「ついに頭も筋肉になっちゃったんじゃないですか、新八っつぁん」
一同、ついにかと冷たい目で見守る。
「パオォ─────ッ!」
「ぱおぉ─────っ!」
「パオォ──ッ?!」
「ぱおぉ──っ!!」
「パオッ」
「ぱおっ!」
ゾウと張り合いを始めた永倉に、もう筋肉バカは放っておこうという決断を出し、一同は隣の大型動物コーナーの柵に向かった。
「あの…いいのでしょうか…?」
「ほっとけ千鶴。筋肉だから気付かねぇよ」
「は、はぁ…?」
イマイチ納得出来ない土方の答えを聞きながら、千鶴は一度だけ振り返って頭を下げた。
「うわっ!デカーっ!!」
平助の声に皆が上を向く。
「キリン故、大きいのは当たり前だと思うが」
「平助が小さいだけだろっ」
「左之さんがデカ過ぎんのっ!」
どうしたらこんなに脚が長くなるんだろう、と柵から身を乗り出す平助の背後から、キラリと光る丸いもの。
ぽんっ、と後ろから肩を叩くのは、勿論…
「さ、山南…さん……?」
「さぁ、これを」
広げた手のひらには、小さな瓶と、中に光る紅い液体。
平助は瓶を受け取ると、それとキリンを交互に見詰める。
「……俺もこれで…」
手のひらの中を見詰めたまま動かなくなった平助を尻目に、一同…山南を除く一同は同じ思いを抱いてその場を後にした。
((新たな犠牲者が……))
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