浅夢物語
□動物園に行こうよ!
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「あ…」
千鶴が見詰める先には、赤ちゃんライオンとの記念撮影場。
「どうした千鶴」
顔を覗き込んでくる原田に微かに頬を染めながら、恥ずかしそうに口を開いた。
「赤ちゃんライオンさんと一緒に撮りたいんですけど…」
「ん?」
「ちょっと怖くて…」
ちょっと潤んだ瞳で言われれば、俺はライオンよりお前と撮りたいと言いそうになる。
分かった分かった、と千鶴の頭を撫でて、先に自分が行けば安心するだろうと撮影に挑んだ。
「あれ〜、千鶴ちゃん、左之さんは〜??」
「あ…今記念撮影をされちゃっています」
されちゃっています、ってどういうこと?と聞こうとしたけど、その疑問はあっさり解決した。
キャーという黄色い声が撮影場から聞こえてきた。
これで大体納得。
つまり、
"赤ちゃんライオンと左之さんと記念撮影"
「なんだ、原田もいねぇのか」
「あ、土方さん…原田さんもって…?」
他にも誰かいないのか、と辺りを見回すと、確かに丸い2つの光がない。
「あの、山南さんは…?」
「…何やら、『いい材料を見付けました』と言いながら、爬虫類館に入って行ったが」
「……材料」
きっと…アレだ。アレ。
誰も口には出さないけれど、みんな分かっている。
爬虫類を材料にした次のアレの、犠牲者にだけはなりたくない、と再確認する一同であった。
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