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□act.5・5
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白ウサギはゆっくりと、赤いカーペットの敷かれた階段を上がっていた。
長い長い階段を上がりきると、真紅一色で統一された広間が現れる。

そしてその奥には、一段高い玉座がある。
白ウサギは、その玉座の前で跪いた。



「女王陛下。コマツ ナオをワンダーランドへと呼び寄せて参りました。」


色素の薄い、美しい栗色の髪を揺らして静かに白ウサギは告げる。
玉座に腰深く座る女王は満足そうに口角を上げて微笑んだ。



「ご苦労だったな、ピュア。」


気高い声音でピュアを褒め称えると、女王…スカーレットはドレスの裾を掴み、玉座から立ち上がった。



それが合図だったかの様に、二人のエルフの青年従者が女王の前に巨大な鏡を置いた。

その鏡は、女王の身長を越えるほど大きく、縁のデザインや鏡に宿る光には、何か神秘的な物を感じさせられる。



スカーレットは、白く長い指先でなぞるように鏡面に触れた。―…と同時に、鏡は淡い光を放ち、風景を映し出す。




「ほらほらお茶会は始まったばかりですよー」
「いや、だからもうスコーンはいらな…」
「いいから食べるにゃ!」
「まだ沢山あるからね〜☆」




―…映し出されていたのは、フェンダールの時計台付近の様子。
そこでは、アリスとフェンダール元領主マッドハッター、三月ウサギマーチ、迷いの森の元領主チェシャの姿が映し出されていた。



「フッ…三人で協力して妾(わらわ)を倒そうという考えか…」



馬鹿にするように、しかし楽しげにスカーレットは真っ赤な唇を歪ませてそう呟いた。従者とピュアは、緊張した面持ちでスカーレットを見据えた。





「早く…オモチャがここに来ると良いですね」


ピュアが言うと、スカーレットは首をゆっくりと横に振り、再び玉座に腰を落とした。





「焦ってはならぬ。妾はその時を待つ…オタノシミは一番最後にとっておきたいからな…」


ふふ、とさぞかし楽しそうに、スカーレットは目を細めた。血を思わせる赤い瞳が微かにぎらつく。









「それまでが、憂鬱じゃ。」






広間は、スカーレット女王の溜め息で満たされた。

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