中岡慎太郎〜夢の通い路〜
□第拾話
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【中岡慎太郎 第拾話】
<ナミ>
船を降りたら、すごい雪景色だった。
一体どのくらい積もってるんだろう?
長崎の比じゃない…。
「…そして寒いーっ!」
ぴゅーっと吹いてくる風に、私は思わず慎ちゃんの後ろに隠れる。
<慎太郎>
「あ、ナミちゃん、今おれを盾にしたっスね!」
<ナミ>
「だって寒いんだもん」
すると慎ちゃんはちょっと振り向いてにこっとする。
<慎太郎>
「どうぞ、おれの背中でよければいくらでも使ってくださいっス」
<ナミ>
「え…」
そ、そうくるのね。
…慎ちゃん、やることも言うこともいちいち格好いい。
これじゃこの先、毎日一緒にいたら、私どうなるか…。
「…っ」
また一段と冷たい海風が襲ってくる。
…と思ったらすっと慎ちゃんが私の手を取った。
え?なに?
まさか…。
<慎太郎>
「ナミちゃんがんばれ!」
<ナミ>
「え?あ!あぁぁーっ!」
ときめいたのも束の間、遠心力でぐるっとされて、私は慎ちゃんがいた風向きの強い方に回される。
…もろに風を被って私は思わず慎ちゃんの胸に飛び込んだ。
<慎太郎>
「え、あ…」
<ナミ>
「あ…う…」
な、なんで慎ちゃんが照れるのよ…。
慎ちゃんがやったことじゃん。
あれから龍馬さんの帰りを待たずして、私は慎ちゃんと京行きの船に乗り込んだ。
以蔵には慎ちゃんから話を通してもらった。
それどころか龍馬さんへの置手紙まで用意してくれて…。
もう私は慎ちゃんには頭が上がらない。
ただでさえ大きな存在なのに。