頂き物★
□不思議
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(ナミ視点)
「雨だね」
「……」
「早く晴れないかな…」
連日のように降り続いている雨。今も窓の外はしとしとと霧雨のような雨が降っている。
「ずっと雨でつまんない。…ね」
と顔を窓からこの部屋の主へと向けるが、見える背中からは何も反応が返ってこない。
それもそのはずで、私がこの部屋へ来た時からずっと刀の手入れをし続けている。
襖を開けてもらった時ぐらいしか顔を合わせていないなぁ
一緒の空間にいるけど、特に会話があるわけでもない。
まぁ、邪魔者扱いされていないだけいいの…かな?
部屋に入って、いることを許されているのだから多くは望んじゃいけないけど…けど、何もすることもなくいるのにも飽きた。
窓の外、止むことの無い雨を見てまた溜息が出た。
「暇人だな」
私の溜息後、以蔵が言葉を発した。
雨が降っていようが龍馬さん、慎ちゃん、武市さん、それに以蔵も変わらない日々を過ごしている。やれ会合だ、使いの文を届けたり、送り迎えをしたり、忙しそうだ。
そんな私はいつものように外を掃くことも出来ず、室内を掃除したらやることもなくなってしまいぼーっとしていたところに以蔵が戻って来た。
びしょ濡れで帰ってきたのには驚いた
廊下を歩いて自室へと戻る以蔵に「おかえり」を言おうと襖を開けて出て待っていたら、髪も着物も水分を含んで重く色が変わっていた。
そしてその事を気にも留めず歩く以蔵に「おかえり」ではなく、
「せっかく掃除したのに」
と漏らしてしまった。
「あっ!違う、違うの。風邪引くよ以蔵。あっ、おかえり」
「ああ」
私が捲くし立てる様に言うと少し驚いた後に彼らしい短い返事が耳に届く。
「ねぇ、拭かないと」
「これでいい」
私が手拭いを自室から持ってこようとすると以蔵は懐から手拭いを出して乱暴に拭くと歩いて行ってしまった。
そんなやり取りをした後にお茶を持ってここに来た。
雨で濡れて心配とお茶は建前で一人がつまらないから、これが本音。
そしてふっと思いつく。
その思いつきに私は忍び笑いを漏らし、行動に移した。