頂き物★

□ずっと…ふたりで
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ナミside

真新しい神社のお社の前で、私は見送りに来てくれた龍馬さん達に向かい合っていた。

「…皆さん、短い間でしたけど、本当にありがとうございました」

ありったけの感謝の気持ちを込めて、私は深々と頭を下げる。

「…本に、お別れなんじゃのう」

「龍馬、そんな女々しいこと言うな。ナミさんが、せっかく元の時代に戻れるというのに…」

「先生の仰る通りだ。ナミにとっては門出の日だろう?」

「武市さん、以蔵、そんなに龍馬さんを責めないで下さい。正直、私も寂しいんですから…」

「ほうか?じゃったら、遠慮のう残ってくれても…」

「龍馬さん、これ以上姉さんを困らせないで下さいよ」

「慎ちゃん…」

「姉さん、お元気で」

「ありがとう、慎ちゃんもね…」

そう答えるのが精一杯…。

あんなに、もとの時代に戻りたいって、そればかり考えていたのに…。

帰りたくない。

いつしか、そんな気持ちが、私の中に芽生えていた。
だけど、それは自分の我が儘だって思うから…皆に、慎ちゃんに迷惑をかけたくなかったから。

私は気持ちに蓋をして、背を向けた。

…さよなら、慎ちゃん。


想いを断ち切る様に、しめ繩を強く揺らす…。


……

…………

…………………


「……!?」

気がつくと、目の前にある神社はすっかり古ぼけたものに変化していて…。

「戻れ…ちゃった……」

私は、呆然と…その場に立ち尽くしていた。






…新学期が始まった。


いつもの様に朝が来て、学校へ行って、部活に励んで、そして日が暮れて…。

自分で望んだ事なのに、納得出来ない自分がいる。

時がくれば、忘れられると思っていたけど、現実は真逆。
時間が立てば経つほど、気持ちが一杯になって胸が苦しくなる。

逢いたい…逢いたいよ……。



「ナミ、ナミってば!」

カナちゃんに名前を呼ばれ、ハタと我に返る。

放課後、カナちゃんに誘われて、ファーストフードのお店に寄ってたんだ。

「…ごめん、ちょっとボーっとしてた」

「何かさ…夏の合宿終わった頃から、ずーっと変だよね?」

「…そ、そうかな」

「ため息、多いし…何かポーっとしてるし、今まで歴史なんか全然興味なかったのに、やたら図書館で調べてるし…」

「知ってたんだ…」

「んもー、一体何年友達やってると思ってんのよ!」

…カナちゃんには敵わないな。
なるべく普通にって思ってたけど、バレバレだったんだ。

私が苦笑いしていると、カナちゃんは急に真剣な表情になって、こう切り出した。

「…で、何があったの?」

じっと私を見詰めるカナちゃんの瞳が、本当に私を気遣ってくれているのが分かる。
…カナちゃんには、ごまかしたくない。

「ごめんね…いつも、心配ばっかりかけちゃって…」

「何よ、今更…」

「私、自分の気持ちが…よくわからなくて」

「…自分の気持ち?」

「こんな事、今までなかったの。気がつくと、ある人の事ばっかり考えていて…」

「うん…」

「今何してるかな?とか、お仕事うまくいってるかな?とか、風邪をひいたりしてないかな…とか…。気がつくと、その人の事ばっかり考えてて」

「……」

「その人の夢を邪魔したくなくて、離れたのに…だけど、全然納得できない自分が…居るの…」

「ナミ…」

気がつくと、私の頬には涙が伝っていて…後から後から零れ落ちてくる。

「カナ…ちゃ…ごめ…うっ…」

耐え切れず、ついに声を上げて泣き出してしまった。
周りの人がチラチラと私を見ているのが分かるけど、そんな事どうだっていい。

…自分の気持ちを抑えることが出来ない。そんな胸の内を全て吐き出すかのように、私は泣き続けた。

「ねぇ、ナミ」

そっと、カナちゃんの手が私の頭を撫でてくれる。

「素敵な人に出会ったんだね」

「……」

「ナミの気持ち、その人知ってるの?」

「……」

「…知らないんだ…てか、遠慮して言わなかったんでしょ?」

「…だって…迷惑、かけちゃうと…思って…」

「ばか」

「え…」

「迷惑って…それは相手がどう感じたかって事でしょ?…一人で勝手に悩んで、一人で勝手に答えだして…相手に失礼だよ」

「…カナ…ちゃん」

「素直になんなよ。その人に正面切ってぶつかってきなよ。それで駄目だったら、潔く諦めればいいじゃん」

「……」

「私は…そう思うよ?」

カナちゃんは、目を潤ませながら…私にニコッと微笑んでくれた。
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