坂本龍馬〜巡り合い〜

□第八話
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【坂本龍馬 第八話】

<ナミ>
毎日まだまだあっつい。
溶けそうな日々が続いているのに、新学期は容赦なく始まり。

部活は秋の大会に向けての追い込みも始まっていた。


<カナ>
「ちょっとー、昨日のあれ見たー?」


<友達>
「見た!カナ絶対興奮してると思ったよー」


<ナミ>
当たり前のように戻ってくる日常…。
そりゃそうだ。

私が平成の世に戻って一ヶ月半くらい?
実際過去で過ごした三日間は、こっちでは一時間ほどしか経っていなかった。

だから勿論私が失踪したなんて大騒ぎもなかったわけで。
何事もなく合宿や夏休みは過ぎていった。

でも。
デジカメにはちゃんと龍馬と桜が写っているし、簪も持ってる。
あれが夢じゃなかったことは確かなんだ。


<カナ>
「私もう台詞覚えちゃったよー」


<友達>
「カナ熱すぎ」


<ナミ>
とはいえ、やっぱりこっちが私の住む世界なんだなっていうのは、嫌でも実感する。
こんなにも自然に過ぎていく毎日は私を現代に引き戻すのに十分だった。


<カナ>
「ナミちゃんも見てよー木曜9時!」


<ナミ>
「なに?テレビ?」


<カナ>
「ドラマ!
幕末ヒーローズ!絶対面白いから」


<ナミ>
カナちゃん…。
それで昨日部活の後のラーメンも断って帰ったんだ…。


<カナ>
「ユウくんの坂本龍馬がめっちゃ格好いいんだから!」


<ナミ>
「あー、ユウくんが出てるんだ…」

そりゃカナちゃんがダッシュで帰るわけだよね。

…。

さかもと、りょうま?

そういえば、宿の人が龍馬のことを「坂本さん」と呼んでいた気がする。

「それってどんな人だっけ?」


<カナ>
「よくぞ聞いてくれましたっ!
薩長同盟の橋渡しして、大政奉還を取り進めた人!」


<友達>
「カナ、カナ!それ別にユウくんがやったわけじゃないから」


<ナミ>
「…んー」

いまいちピンと来ない。
…坂本ってよくある名字だし、同姓同名かな。


<カナ>
「土佐出身で、北辰一刀流!
ほら、ナミちゃん剣道詳しくないの?

若い頃は江戸に剣術修行に出て…」


<ナミ>
「土佐…とさ?
江戸…!」

聞きなれたフレーズ。
あのときは全くわからない地名だって思ったけれど、江戸っていうのは江戸時代の江戸なんだよね。

でも、土佐出身で、江戸に修行ってことは…
…坂本龍馬は…龍馬ってこと!?


<友達>
「あーでも龍馬絶対、来週暗殺されちゃうよね」


<カナ>
「いやっ、私ユウくんが暗殺されたらもう見ないから!」


<ナミ>
あっ…

「暗殺!?」

教室中に響き渡る私の声で…クラスのみんなが一斉に振り返った。


<カナ>
「ナミ…ちゃん?」


<ナミ>
…はっ。

「あ、いや…なんでもない…」

思わずその場を取り繕うけれど。

喉が渇いて…奥歯がカチカチ鳴った。

龍馬、殺されちゃうの?

「カナちゃん…日本史の資料集持ってるよね?
ちょっと見せてくれないかな」


<カナ>
「え、いいよ。どうしたの?」


<ナミ>
「ちょっとね」
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