武市半平太〜花火〜

□第七話
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【武市半平太 第七話】

<ナミ>
私は、結構ずるいと思う。
実は新撰組の屯所からの帰りがけ、武市さんに内緒でひとつ、土方さんにお願いをしてしまった。

それは…。
あの神社付近の警備を厳しくしてほしいっていうこと。


(<土方>
「構わねぇよ。
俺も半分お前を誤解してここまで連れてきちまったからな。

元々あの辺りは縄張りみてぇなもんだし、その程度の頼みならきいてやるよ」)


<ナミ>
承諾してくれたのは嬉しいけれど、土方さんは一体私をどんな風に誤解してたんだろう?
田舎者っていうの、信じてくれたように見えたけれどそういうわけじゃなかったのかな。

まぁ、なんにせよこれで未来に帰る日程は当分延期。
私の心配はなくなっちゃった。

こうなると、誤解してくれた土方さんに感謝しなくちゃだなー…。


<武市>
「ぼうっとしていると転びますよ」


<ナミ>
「えっ?
あ、はい」

そんな私は、一夜明けた今日も武市さんと卯之助さん探しの真っ最中。
…土方さんは、武市さんが卯之助さんのことを探すの、どう思ってるのかな?

きっと二人の間で何か話しがあったんだろうけれど…私はまだそれを聞けていない。
昨日は武市さんが「疲れているだろうから」って言って、すぐに寝かせてくれた。

私はもっとたくさん話をしたかったんだけれど…不覚にも…寝ちゃったんだよね…。

「あっ!」


<武市>
「?」


<ナミ>
「アゲハ蝶!」

すごーい!
おっきい!
綺麗!

黄色と黒のアゲハが、知らないお花の間をひらひら飛んでいる。


<武市>
「…君はまだまだ子供みたいですね」


<ナミ>
「えっ」

…と。
ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかな。

慌てて弁解しようとしたら…

武市さんは、笑っていた。


<武市>
「…」


<ナミ>
…まだちょっとぎこちなかったけれど。
初めて会ったときはこんな風に簡単には笑わなかった。

少しずつ、元気になってくれているのかな?
以蔵が言っていたように、私に心を許してくれているのかな…。


<武市>
「…どうしました?」


<ナミ>
「え?えぇっと、べ、別に」

い、いけない。
ついじーっと見過ぎてしまった。

なんていうか…。
見とれちゃったっていうか…。

だめだめ、私。

「…」

でもなぁ。
少しでも意識すると…。

昨日、抱きしめてもらったことを思い出しちゃう…。

あのときは必死だったけれど、今考えるとものすごく、照れる。


<武市>
「…今日はもう宿に戻りませんか?」


<ナミ>
「…あ、そう…しますか?」

私としてはもう少し卯之助さんを探したかったけれど。
武市さんがそう言うなら仕方ない。

素直に頷いて、まだ日が高いうちに宿に戻ることにした。
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