季節イベント用短編集

□Flavor Of Life
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<ナミ>
…私がタイムスリップして、もう半年近くが経とうとしていた。
なんだか、高校に通っていたことの方が夢みたいな毎日で。

すっかり、慣れちゃったっていうのかなぁ。
私は屯所の井戸の近くでふと足を止めて空を見上げる。


<沖田>
「ナミ、ただいま」


<ナミ>
「あ、総司くん」

振り返ったら、羽織を抱えた総司くんが立っていた。

んー…。
この光景も。
もう見慣れてしまった。

知らない山道で偶然私を見つけてくれた総司くん。
それからここに連れてきてもらって。

私にとっては本当にかけがえのない人。


<沖田>
「さっき誰と話してたの?」


<ナミ>
「平助くんだよ」


<沖田>
「ふーん。藤堂くんもずるいな。僕の前じゃ君に声かけたりしないくせにね?」


<ナミ>
「うーん…」

総司くんはたまにこうして、私が誰と話しただとか、誰と一緒にいたかを気にする。

少し…やきもち妬きな人なのかもしれない。
ううん、その表現はちょっと自意識過剰かな。

それは、男所帯で暮らす私への気遣いみたいなもので。
その心配が少しばかり行き過ぎてしまったというか…。


<沖田>
「藤堂くん、優しいけれど軽いから。気をつけてよ」


前に土方さんは、私を総司くんの妹みたいだと言ってたけれど。
…そんなものなのかなぁ。

総司くんは責任感の強い人だから、初めに私を見つけたって理由で気に入ってくれているだけなのかもしれない。


だけれど総司くんの言葉はいつも、やきもちと保護責任のどちらかなのか、私をやきもきささせる。


<沖田>
「ナミ?」


<ナミ>
「え?…あ、ごめん」

うっかり本人の前でぼーっとしちゃった。


<沖田>
「風邪?まだ寒いからね。水仕事頼んじゃってごめん。
藤堂くんも、どうせ油売るなら代わりにやってくれればいいのにね」


<ナミ>
「あはは、でもそれじゃあ私がここにいる意味なくなっちゃうから」

私がここでできることって言えば家事くらいだし。


<沖田>
「で、どうなの?風邪?」


<ナミ>
「え?違う風邪じゃない…よ」


<沖田>
「…」


<ナミ>
…天然なのか、わざとなのか。
総司くんが私におでこをくっつける、それにすらもう慣れた。

でも未だに何を考えてるのかよくわからないんだよね。


<沖田>
「…うん、平気そうだね。じゃあ今から少しだけ街へ行こうよ」


<ナミ>
「え?でも、まだ仕事残ってるからなぁ」


<沖田>
「僕の仕事が終わったんだから、堅いこと言わないの。
後で藤堂くんにやってもらえばいいから、さ、行こう?」


<ナミ>
…さっきまで平助くんと話すのがいけないことみたいに言ってたのに。
調子いいなぁ。

「わかった!じゃあ行く」

帰ったときに平助くんが捕まるかはわからないし、さぼったら土方さんに怒られちゃうかもしれないけれど…。

せっかく総司くんが誘ってくれたんだし、なんとかなるよね。
私は総司くんの後を追って街に出た。
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