季節イベント用短編集
□GIFT
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<ナミ>
うー、寒い。
この寒さは尋常じゃないよ。
なのにエアコンもストーブもないなんて…。
「死んじゃう…」
みんなはどうやってこれを乗り切ってるんだろ。
どんなに我慢しても寒さは増す一方だし…。
ずっとここにいたら、いつか慣れるもんかな。
ずっと…。
私一体いつまで江戸時代にいるんだろ。
<平助>
「おーい、大丈夫か?」
<ナミ>
「わっ、平助くん」
ざっと襖が勢い良く開けられて…聞こえてきたのは耳慣れた声。
もう、突然入ってくるからびっくりしちゃった。
平助くんはいっつもこうなんだよね。
何度も「声かけてから入ってきて」って言ってるのに。
もう一度念を押さなきゃダメかな?
でも寒いからか、なかなか口が動かないよ…。
<平助>
「あのなぁ…そんな寒そうにしてよ。
火鉢勝手に持ってっていいっていつも言ってんだろ!」
<ナミ>
「う、うん、ありがと…」
平助くんにとっては、私のびっくりはどうでもいいことみたい。
別に着替え中ってわけでもなかったからいいんだけれどね。
ただ、少し心の準備がしたかっただけ。
まぁそれはいいとして…。
火鉢に関しては、私点け方知らないんだよなぁ。
毎回忙しい新撰組の人たちに頼むのも申し訳ないし、どうも使いづらい。
<平助>
「なんだよ、その顔は。
仕方ねぇな…」
<ナミ>
「あ!」
少し横にずれた平助くんの足下には…火鉢!
わざわざ持ってきてくれたんだ!
「ありがとう!」
<平助>
「ああ、いいっていいって」
<ナミ>
嬉しくなってすぐとりに行こうと立ち上がったら…それを遮るように平助くんは火鉢を持ち上げる。
なんか悪いな、全部やらせちゃ。
「いいの?平気?
重いよ?」
<平助>
「あのな…
重いからおれが持つんだろ。
本当にナミは何言ってんだか」
<ナミ>
「…」
そっか。
なんかそういうの考えたことなかったなぁ…。
言われてみればその通りだよね。
でも、こういうの…
「…」
私は照れるんだけれど。
学校では運動部ってこともあって、どちらかといえば男子にも頼りにされるキャラだったし。
自分が男の子に「重いから持つよ」なんて言われるなんて、想像もしてなかった。
そんな、漫画かドラマみたいなこと…
私にはあるわけ…
<平助>
「何ぼーっとしてんだよ」
<ナミ>
「えっ」
い、いけないいけない…。
思考が飛んでた。
気付けば平助くんは火鉢を置いて自分もすっかり落ち着いてるし。
立ったままの私はどう考えても挙動不審だよね。
「ご、ごめんね、ぼんやりしちゃって」
<平助>
「風邪でもひいたのかー?」
<ナミ>
「ううん、そんなことないよ!」
気を遣わせる前にとりあえず座ろう…。
平助くんの隣は、火鉢のせいか少しあったかい。
ふぁぁ…。
生き返る…。
<平助>
「はぁ…。
なぁ、少しここにいてもいいか?」
<ナミ>
「えっ?
どうぞどうぞ…」
よく見たら平助くんはちょっぴり眠たそうな、疲れた顔をしてる。