季節イベント用短編集

□星に願いを
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<ナミ>
…今日は遅くなっちゃったなぁ。
洗濯物が結構たくさんあったから…。

もう夕暮れ迫る境内の石段が赤く染まっている。
暗くならないうちに帰らなきゃ。

遠くで虫の音が聞こえる中、私は一人で神社にお願いごとをしている。

「…」

今まで縁のなかったお参りの仕方だって、もう慣れた。
だから、神様…きっと私のお願い、聞いてくれるよね?

私、知ってるよ。
この神社は絶対人の願いを叶えてくれる不思議な力を持っていること。

だって私は…。
この神社から江戸時代に来たんだもの。

そう、総司くんのいるこの時代に。

だから神様。
その力で、私のお願いを叶えてね。

何度も心の中で呟いて、それから目を開けた。

わぁー…。
綺麗な空。

もう陽が沈み始めているみたい。

さっきまで真っ赤だった空が、緑色に変わっている。
遠くの方に一番星が浮かんでいた。

本当に、宝石みたい。

「…」

…と、こんなことしてる場合じゃないよ。
早く帰らねば。

来た道を急いで引き返す。

こんな時間に屯所を出たことを知られたら…。
怒られてしまうだろうなぁ。

一生懸命走って、新撰組の屯所にやっとたどり着いた頃には。
もう星は一つどころじゃなくて、空一面に散らばっていた。
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