人斬り以蔵
□第八話
1ページ/4ページ
【岡田以蔵 第八話】
<ナミ>
以蔵に怒られたあの後、私は全然仕事にならなくて早々に部屋に帰してもらった。
でも…考えても私にはわからないことだらけで。
どんどん暗くなってしまうから、翌日からはフルで働かせてもらった。
仕事は結構キツいけれど、その分気が紛れるし、早く眠れる。
寅之助さんに仕事を誉められることも多くなったし、お客さんに気に入ってもらえると嬉しかった。
以蔵のことは…
なるべく考えない。
会いたい、話したい、そう思っても、以蔵の居場所はみっちゃんですら知らないんだから。
私が知れるわけなかった。
<ミツ>
「ナミさん、こん人がうちの旦那様になるお方やち」
<ナミ>
みっちゃんは近々お嫁入りするらしい。
よくよく聞いたら、お見合いをしたのはたった数日前―私と以蔵が二人で街に出かけた日のことだった。
私と同い年くらいなのに…。
この時代ではそれが一般的だそうだ。
でもみっちゃんはあまり嬉しそうじゃない。
本当は結婚なんてしたくないんじゃないのかな…。
みっちゃんの好きな人って別にいるんじゃ…。
私が想像できる人物は一人しかいないけれど。
その人じゃダメな理由が、まだこの時代にはあるのかな。
んん、でも…。
もしそれが叶ったとしたら。
私は素直に「おめでとう」って言えてた…かなぁ…。
そんなことをぼーっと考えながら夕方になった頃、一週間ぶりに以蔵が現れた。