季節イベント用短編集

□ねぇ
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<ナミ>
今日が平助くんの非番の日だっていうのは知っていた。

…というか私が無理やり平助くんを非番にしてしまった。

平助くんの今日の予定をあれこれ聞いてくる私を不審に思ったのか、声を掛けてきた沖田さんが気を利かせてくれたんだよね。


(<沖田>
「ふーん?
絶対その日に平助くんと出かけたいんだ。

ならいいよ。
お土産買ってきてくれるなら、僕が変わってあげます」)


<ナミ>
…なーんて、いかにも沖田さんらしい。

ていうか、それは沖田さんの優しさだよね。
でもその優しさを押し付けないところが大人っていうか。

とにかく、今日の予定を実現させるためにそんないきさつもあった。

でも私、平助くんにちゃんと「出かけよう」って言わなかったんだよね。
だってなんだかいつも忙しそうで…。

遊びの話をするのが申し訳なかったから。

そうそう、私が立てた今日の予定はというと。

…まず、町をちょっとぐるっとする。

その後以前平助くんが話してくれた景色の綺麗な林の方までお散歩に行く。

最後にいつもの甘味屋さんで、平助君にお汁粉をおごってあげてフィニッシュ。
一応、バレンタインのお返しってわけだしね。

あんまりふたりで出かけることなんてないから…。

色んなところに行きたい。

色んなものを見たい。

知ってる場所でもきっと、平助くんと一緒なら違った景色に見えるから。

「…」

…って思ったんだけれど。


<平助>
「ぐぅ」


<ナミ>
「ねぇ、平助くん」


<平助>
「…」


<ナミ>
寝たっきり…。

「…」

やっぱり、疲れているところ起こしちゃかわいそうだよね…。

今日が非番だって聞かされた平助くんは、なんて思ったんだろう。
沖田さんのことだからきっと、私が頼んだってことは言ってないような気がする。

だからきっと…。
お昼まで寝れてラッキー、ってところだよね。


<平助>
「…」


<ナミ>
バレンタインのとき、私に椿の花をくれた平助くん。
もちろん平助くんはバレンタインを知らないから、たまたまだったんだろうけれど…。

それでも私は嬉しかった。

だからどうしてもお返しがしたくって。
ホワイトデーの計画をしたんだよね。


<平助>
「むー…」


<ナミ>
平助くん、さっきからむにゃむにゃ言ってるけれど、全然起きない。

「今日は…諦めようかな」

思えばホワイトデーにこだわる必要なんかないわけだし。

沖田さんには悪いことしちゃったけれど…。
今度お菓子買ってきてあげればいいよね。


<平助>
「…」


<ナミ>
「なんか、私まで眠くなってきちゃったな…」

幸い今日は日が当たってあったかいし。
少しだけ…私もお昼寝、しちゃおうかな。

あ、昼じゃなくて朝だから…朝寝…?
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