Short stories

□SAO プロローグ
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薄暗い一室。
カーテンの隙間からは外気が窓を叩いて冷気を部屋に伝えている。


11月5日 土曜日。
冬を知らせるかのような寒さが一段と身に染みる。毛布を被っているはずの体が部屋に溜まる冷気で刺激される。


「……よっ、こらせ」


掛け声とともに起き上がってベッドから出ると、より一層冷気が体を刺す。薄手の長袖とジャージという格好は多少堪えるが、我慢して部屋から出る。


洗面所で顔を洗い、再び部屋に戻って制服に着替える。ブレザーとネクタイ、それとコートを腕に掛けてリビングに入る。


台所を素通りしてすぐ近くの四人掛けのテーブルに向かう。イスの背もたれにブレザー等を掛けて台所に入る。


ヤカンを火にかけてマグカップを用意する。にコーヒーをスプーン二杯分入れて沸騰を待つ。


待っている間に携帯を弄る。
ネットニュースに目を通していく中で気になる単語を見つけてリンクをクリックする。
そんな時にヤカンが沸騰した。


熱々のマグカップを片手に、冷蔵庫から出した昨夜作り置きしておいたサンドウィッチをテーブルに運ぶ。
案の定パサパサのサンドウィッチをコーヒーで流し込む。味が気持ち悪いことになっているが気にことにした。


約5分でサンドウィッチ6個を完食し、最後に口直しに残しておいた一口分のコーヒーを流し込んで朝食を終わらせる。


皿とマグカップを洗い、適当に濡れた手をタオルで拭く。台所を出てイスに掛かっているブレザー、ネクタイ、コートを着てリビングを出てカバンを取りに部屋に戻る。


最後に玄関で持ち物と記憶を頼りに戸締まり等を確認して部屋を出る。


・・・・・・・・・・


せっかくの休日にも関わらず9時代の電車に揺られて向かう先は、現在中3の身分の為通わされている塾である。自分で言うのもなんだが何事もそつなくこなしてしまい勉強も例外ではなかった。
一応塾内では高成績の為、期待もされている。ただ、その期待に応えようとか殊勝な理由はなく、良い子ちゃんをしていれば面倒事が少なくて済むという経験則に基づいた怠けた考えだ。


塾に着いたら自習部屋に直行し昼からの授業まで勉強してるフリ。授業が始まっても聞いてるフリ。そうして約半日近くを塾で過ごし帰り際に講師の先生に家庭の事情で明日は休むことを伝えて帰路に着く。


21時頃に家に戻り途中で買ったコンビニ弁当を食し風呂に入って22時頃にはベッドに入った。
いつもは1、2時まで起きているのが常だが明日は待ちに待ったとあるVRMMOの正式サービス開始されるのだ。早寝したとしてもデメリットは少ない。
まあ、日々の習慣は意外と難敵で本格的に眠気が来るまでに30分ほどかかった訳だが。


・・・・・・・・・・


起き抜けに再度思った。
日々の習慣は難敵だと。
上記でも語ったが、いつもは深夜の1、2時まで起きている体が23時近くに寝たとしても体感時間が狂ってしまうのも当然だろう。
まあ色々言い訳したが、端的に言って寝坊である。
予定としては8時頃に起きて、ネットで十分に情報収集した後に10時頃にはインのつもりが、現在11時である。


ここまでの寝坊だと色々諦めがついてくる。
その後はゆっくりとした休日の一時を過ごした。結局インしたのは13時を過ぎた辺りだった。

だが、このゲーム『ソードアート・オンライン』にフライングはなかった。あったのは通常のゲームとは違うSAOの”仕様”とゲームマスターからの”死の宣告”にも似た無情な現実だった。


しかし、例え起こる事を事前に知っていても、俺はインしていただろう。
何故なら俺”も”こういう非現実を求めていたから。
その非現実が命を懸けるものだったとしても・・・。
 

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