小話
□幸せの砂
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※本編『愛結び』の番外編です。
白「そうや。昨日りんちゃんって何処行ってたん?」
『ふぇ、』
ハワイから日本に移動する飛行機の中、隣に座るりんに白石はふと問い掛けた。
りんはハワイの観光雑誌から顔を上げて、『えと…』と少し言いにくそうに視線を下に向ける。
『買いたいものがあって、』
白「買いたいもの?」
白石が首を傾げていると、足元に置いてある鞄から何かを探し始めた。
取り出した後、白石を見ては頬を赤く染めて。
やがて決心したように前に差し出した。
『これ…』
りんの手には、小さな小さな小瓶。
その中には綺麗な白砂が詰められていた。
首を傾げる白石を、怖ず怖ずと見上げる。
『この砂…大好きな人にあげると、その人が幸せになれるそうなんです。だから瓶を買ってきて、その中に詰めて、』
跡部に教えて貰ったと一生懸命に説明するりんだが、ふと先程の自分が発した言葉を思い出した。
『あ、えと、大好きっていうのは……///』
カァァと顔を真っ赤に染め1人慌てるりん。
そっと前を伺えば、白石は口元に手を添えていて。
くくく…と笑いを堪えていた。
白「何回告白しとんねん」
『!?』
そんなに何回もしたかな…と記憶を辿るけど思い出せず。
白石は優しく口元を緩めると、りんの手から小瓶を受け取った。
白「ほんなら…またお揃いが増えたな」
その言葉に首を傾げている間に、白石はポケットから何かを取り出して、りんの掌に置いた。
途端に、その表情は驚いたものに変わる。
『これ……』
それは、小さな小瓶。
同じように白砂が詰めてあった。
白「俺も大好きな人にプレゼント」
ふわりと微笑んだ白石を見て、りんの胸はキュンと鳴いた。
同じように思ってくれていたことが、すごく嬉しくて。
りんは渡されたそれから顔を上げて、白石を見つめた。
『…ありがとう、白石さん』
自然と零れた笑顔。
白石の腕が伸びてきて頬にそっと触れた為、りんの身体はびくんと跳ねた。
『あのっ』と意気なりの事態に混乱するりんだが、顔を近付けられる。
トンッと窓際に座っていたりんの背に、壁が当たった。
白「…俺、うさぎなんやって?」
『ぇ、』
白石はすっと目を細め、更に攻め寄ってくる。
白「うさぎに見える…?ほんまに、」
ドキドキと鼓動がうるさいほど鳴って、今どのくらい自分の顔が赤いのかわからない。
窓に白石の片手が付かれ、逃げ場なんてなくて。
顔を真っ赤にしながら、りんはコクンと頷いた。
白「…………」
微かに眉を寄せた白石を不思議に思っていたら、耳元に口を近付けられ…
白「もし次言うたら……」
囁かれ、りんの顔はボンッと一気に上昇した。
白石の表情は楽しそうで、やっぱり余裕いっぱいで。
『(……敵わない)』
ぐっと唇を噛み締めて、りんは渡された砂の小瓶を窓際にそっと置く。
暫くして彼の小瓶が隣に置かれて、それは2つになった。
忍「何であんな話、2人にしたん?」
忍足はコーヒーを飲む手を止めて隣を見る。
窓の外を眺めていた跡部は、そんな忍足に視線を移した。
跡「あいつはどうでもいい。…けど、りんのあんな顔は見たくもねぇからな」
「それだけだ」と言い捨てる。
芥「なになに、何の話??」
後ろからピョコッと顔を覗かせるジロー。
忍足は困ったように小さく笑った。
忍「跡部は作り話が上手い言うこと」
ジローは意味がわからないのか、??と首を傾げる。
跡「……寝る。何かあったら起こせ」
忍「はいはい(ふて寝か)」
背中を向けて眠る跡部を見ながら、ほんま不器用やな…と心の中で溜め息を吐いた。
***
りんちゃんもそうですが、幸せを想いながら砂を集める白石を想像したら何だか可
愛くて^^
何を囁かれたのかは…皆様のご想像にお任せします;
きっとこの後のイチャイチャぶりに「いい加減にせぇ!!」と誰かがツッコんでくれるはず…。
跡部も白石に負けないくらい、本当に一途だと思います。
本編含め、読んで頂きありがとうございました(*^O^*)