小話

□幸せの砂
1ページ/1ページ



※本編『愛結び』の番外編です。











白「そうや。昨日りんちゃんって何処行ってたん?」



『ふぇ、』




ハワイから日本に移動する飛行機の中、隣に座るりんに白石はふと問い掛けた。


りんはハワイの観光雑誌から顔を上げて、『えと…』と少し言いにくそうに視線を下に向ける。




『買いたいものがあって、』



白「買いたいもの?」




白石が首を傾げていると、足元に置いてある鞄から何かを探し始めた。



取り出した後、白石を見ては頬を赤く染めて。


やがて決心したように前に差し出した。




『これ…』




りんの手には、小さな小さな小瓶。
その中には綺麗な白砂が詰められていた。



首を傾げる白石を、怖ず怖ずと見上げる。




『この砂…大好きな人にあげると、その人が幸せになれるそうなんです。だから瓶を買ってきて、その中に詰めて、』




跡部に教えて貰ったと一生懸命に説明するりんだが、ふと先程の自分が発した言葉を思い出した。




『あ、えと、大好きっていうのは……///』




カァァと顔を真っ赤に染め1人慌てるりん。



そっと前を伺えば、白石は口元に手を添えていて。


くくく…と笑いを堪えていた。




白「何回告白しとんねん」



『!?』




そんなに何回もしたかな…と記憶を辿るけど思い出せず。


白石は優しく口元を緩めると、りんの手から小瓶を受け取った。




白「ほんなら…またお揃いが増えたな」




その言葉に首を傾げている間に、白石はポケットから何かを取り出して、りんの掌に置いた。



途端に、その表情は驚いたものに変わる。




『これ……』




それは、小さな小瓶。


同じように白砂が詰めてあった。




白「俺も大好きな人にプレゼント」




ふわりと微笑んだ白石を見て、りんの胸はキュンと鳴いた。




同じように思ってくれていたことが、すごく嬉しくて。



りんは渡されたそれから顔を上げて、白石を見つめた。




『…ありがとう、白石さん』




自然と零れた笑顔。




白石の腕が伸びてきて頬にそっと触れた為、りんの身体はびくんと跳ねた。


『あのっ』と意気なりの事態に混乱するりんだが、顔を近付けられる。




トンッと窓際に座っていたりんの背に、壁が当たった。






白「…俺、うさぎなんやって?」



『ぇ、』




白石はすっと目を細め、更に攻め寄ってくる。




白「うさぎに見える…?ほんまに、」




ドキドキと鼓動がうるさいほど鳴って、今どのくらい自分の顔が赤いのかわからない。



窓に白石の片手が付かれ、逃げ場なんてなくて。




顔を真っ赤にしながら、りんはコクンと頷いた。




白「…………」




微かに眉を寄せた白石を不思議に思っていたら、耳元に口を近付けられ…




白「もし次言うたら……」



囁かれ、りんの顔はボンッと一気に上昇した。




白石の表情は楽しそうで、やっぱり余裕いっぱいで。




『(……敵わない)』




ぐっと唇を噛み締めて、りんは渡された砂の小瓶を窓際にそっと置く。




暫くして彼の小瓶が隣に置かれて、それは2つになった。

























忍「何であんな話、2人にしたん?」




忍足はコーヒーを飲む手を止めて隣を見る。


窓の外を眺めていた跡部は、そんな忍足に視線を移した。




跡「あいつはどうでもいい。…けど、りんのあんな顔は見たくもねぇからな」




「それだけだ」と言い捨てる。




芥「なになに、何の話??」




後ろからピョコッと顔を覗かせるジロー。


忍足は困ったように小さく笑った。




忍「跡部は作り話が上手い言うこと」




ジローは意味がわからないのか、??と首を傾げる。




跡「……寝る。何かあったら起こせ」



忍「はいはい(ふて寝か)」




背中を向けて眠る跡部を見ながら、ほんま不器用やな…と心の中で溜め息を吐いた。




















***

りんちゃんもそうですが、幸せを想いながら砂を集める白石を想像したら何だか可
愛くて^^

何を囁かれたのかは…皆様のご想像にお任せします;


きっとこの後のイチャイチャぶりに「いい加減にせぇ!!」と誰かがツッコんでくれるはず…。


跡部も白石に負けないくらい、本当に一途だと思います。


本編含め、読んで頂きありがとうございました(*^O^*)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ