小話
□水分補給
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部活終了後、部室に戻るなりゴクゴクと勢いよくペットボトルを飲み干す先輩達。
俺は汗と汚れで大変なことになっているだろうユニフォームを脱ぎ、制服のYシャツを頭から被った。
菊「ぷっはぁ〜俺水がなきゃ生きていけないよ」
桃「本当っスよね〜毎日毎日異常な暑さっスよ!」
着替えつつも水分を摂取する器用な姿に感心していると、横からクスッと笑い声がした。
不「ねぇ越前、人間の体の70%は水分なんだよ」
リョ「ああ…そうみたいっスね」
突然何を言い出すんだ…
訳がわからない顔をしていたのか、不二先輩は更に小さく笑う。
不「越前は水飲まないの?」
リョ「さっきりんに貰いましたから」
練習中どうしても耐えられなくなって、りんが持っていた水を分けてもらった。
…今思えば間接キスだったか。
不二先輩はそっかと笑っただけで、結局何が言いたいのかわからなかった。
『風が気持ちいいねー』
途中まで一緒だった先輩達と分かれ、今はりんと2人で家路を歩いている。
夕方の風は日中と比べると随分涼しくて、ふわり、日に焼けた肌を掠めた。
リョ「りん、全然焼けないね」
『え、そう?焼けたよ、ほら!』
腕をひらひら振って、俺に見せるりん。
その腕は相変わらず真っ白で、全く日焼けを知らない腕。
『明日もドリンクたくさん作らなきゃっ皆夏バテにならないように』
ガッツポーズを取るりんを横目で見ながら、ふとさっきの不二先輩の言葉を思い出した。
リョ「(70%か…)」
半分以上も締めている存在。
俺にとってはきっと…
ふと隣で歩く小さな手を握ると、りんは目を丸くして俺を見つめた。
リョ「ちょっと遠回り」
『ふぇ?』
まだ首を傾げるりんだけど、俺が手を引くと戸惑いながらも素直についてくる。
握った手に力を込めたら、遠慮がちにギュッと握り返してきた。
少しだけ、水分補給。
***
夏のある日の出来事。
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