小説

□僕だけの大空
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「……………おぃ」

「…」

「ぅおぃっ!!!バッレバレなんだよ!!お前が近づくとなんかゾッとすんだよ!!まるわかりなんだよ!!…………また、連れ戻しにきたのかよ。懲りないなぁ」

「懲りてたまりますか」


渋っていたわりにはあっさりと幻術をとき
部屋の隅からコツコツと足音を鳴らしながら近づいてくるフルーティーパイナポー六道骸



「あなたはいつまでそうやって他の世界を掻き乱しながら飛び回るつもりですか?…探す身にもなってください」

「じゃぁ探さなきゃいいじゃんっ♪」

「君は…僕の………いや、君が元々いた世界の仲間達の気持ちを知ってる上での発言なら…僕は許しません。」

「…幻滅した?別に許さなくてけっこう。お前、見ないうちに随分丸くなったな?角が削られてる……っておぅわッッ!!!?;」


容赦ないスピードで鎗を投げた、沢田の顔面目掛けて。当たりますようにと願いを込めて。


「オーィ、とうとう頭の中までパイナポーに侵略されたか??これ、俺じゃなかったら死んでるぞ;」
「えぇ、当然です。殺す気で投げたのだから」



沢田は眉間にしわを寄せた。

骸が本気で自分を殺そうとしているのが読めたから

超直感+読心術まで身につけている沢田。
相手の考えが手に取るようにわかる



が、それが沢田にとっての弱点だった

読めるからこそ―
わかるからこそ―


こいつは殴れない。



「どうしたんですか?僕は君を本気で殺そうとしているんですよ?反撃してはいかがでしょう?」

「…ハハッ、お前…それは卑怯じゃね?わかっててやってんのか?………迷子みたいな面しやがって…たくっ、ダメな子ほどかわいいってこれのことか」



今まで骸は何度も何度も沢田を連れ戻すために
白蘭の協力を得て世界を飛び回り沢田の前に現れた

その度にぎゃぁぎゃぁと口喧嘩に成り果て
結局最終的には逃げられる、それの繰り返し。


でも今回は違った


「(…確実に当てる、たとえ口きけぬ身に成り果てようとも…………)」


―今度こそ連れ帰る。―




「…なぁ、お前んところの世界で何かあったのか?………やめろ、…その迷子みたいな顔!!!やめろ!!」

「…限界です。もう君も満足でしょう、いろんな世界を見て、いろんな体験をして……その度にいろんな人間をしょい込んで。ハッキリ言いましょう、あなたがよかれと思ってやっていることは
とても残酷な行いだ」


「…」

「君当人からすればサッパリわからないことでしょう、……君に手を差し延べられることによって、相手は必ず好意を抱く…さすがは大空だ。しかし、好意を抱いた途端…君はまた、他の世界へと旅立ってしまう…」

「……」

「行ってしまえば最後、普通の人間ではもう二度と君に会える機会はない。……そう、君の半端な優しさは人を不幸にする!!!」

「ワーォ、そこまで言うか〜…まぁ、わかってたんだけどな。けど仕方ないよ、ずっと一つの世界に閉じこもっていると時空軸に歪みがでちゃうし…だから俺、あんまり人と触れ合わないようにしてるんだけど?…なぁんでか、お前みたいなのがわんさかとついてこようとする…」



その言葉に反応し、骸は眉を潜めた


「…その『わんさか』の内…現在何人が生きていると思いますか?」

「ここは胸張って『もちろん全員さ!!』って、言いたいんだけど…無理か。何その周りくどいお知らせ、俺のせいで死んでるとでもいいたいのか」

「そのとおりです。」


「まじか」


「……君と出会い、君と別れ、もう一度君に逢いたい。そんな思いからいろんな世界のいろんな人間達が、まだ化学技術も
発達してないのに無理矢理発明。そして逢いたい一心で自らモルモットとなり……死ぬ。君の通った後の世界はだいたいそんなことになってますね」

「…モテるのも度が過ぎると死に繋がるってか。最悪だな。んで?そんな俺にどうしろと?」

「自分の元いた世界に戻りなさい。」

「ストレート!!;ん〜…戻っても構わないけど…また他の世界に移るぞ?」

「…あの三人ですか」

「あぁ、あいつらもいるんだから、もうどこの世界にも長居はできない」

「クフフ…またですか…また、君の半端な優しさで……、今度は君自身が地に足を付けれなくなっているじゃないですか…いいざまですね」


「ハハッだろ?傑作だ。でも、もう手放せないし、手放したくない」

「そんなに気に入ったんですか」


ヘラヘラと半笑いだった沢田が急に真面目な顔つきで話だしたので思わず骸はたじろぐ

さっきまでは殺す気でいたのに、また沢田のペースにもっていかれてしまった

もう骸は苦笑するしかなかった
「(…まったく、僕はつくづく物好きなんですね)」

そんな骸の内なる思いを知ってか知らずか
止めることなく話を続ける沢田。



「まぁ、奈々達も皆に紹介しときたいし、いっぺん帰るわ。だいたい『もう会える機会がない』?馬鹿か、そんなの俺達がもっともっと飛び回ればいつかはま会えるだろ」

「…君にしては珍しく頭の悪そうな打開策ですね。いくつパラレルワールドがあると思っているんですか」
「大丈夫だって、本当に縁のあるやつは嫌でもまた巡り会う!!まぁ、もう奥さんはいるから女と縁があっても付き合えないがな」

「女性の方々が哀れすぎます…。奥さんって、本当にあの娘にするんですか…」

「あぁ、なんたって俺の女版だからな。信用できるし何より無敵だ、家を任せられるだろ」


「…」


骸は心の底から本当に沢田は変人だと思った

他の世界の自分と家庭を築くなんて聞いたことがない。

どこの世界へ行っても
きっと沢田に敵う変人はいないだろう

骸はそう悟った。



「んで骸、俺を殺してでも連れ帰るんじゃなかったのか?」

「そんな面倒なことをしなくても君は帰ってきてくれるのでしょう?」

「一旦な?…逆に出るときが大変そうだな」

「えぇ、一筋縄でわ皆、離さないでしょうね」

「ん、覚悟しとく。」





********



「ねぇ沢田…私達って邪魔?」

「…奈々か、ふざけんないつ俺がそんなこと思った、お前の超直感ならわかるよな?」

「……うん、ごめん。でも…やっぱ怖いんだ…、今までいろんな世界に行って沢田を渋々見送った人達を見てきて…さ、いつか私が沢田を見送る時がくるのかな…て。逆の立場って怖いんだね、よくわかるよ」

「……俺、みんなにそんなに好かれるようなことした覚えがねぇんだけど」

「無自覚は最大の罪って誰か言ってたなぁ」

「なんだそれ」
「さぁね、あっそろそろ出発の時間だよ」

「お、みたいだな。…久々だ、いつも見てる気がするけど、やっぱみんな違うんだよな。俺の世界…さぁ、どんな反応するか楽しみだ!!」

「みんなちがってみんないい、でしょ?」



―さぁ、4つの大空となって再び彼の地へ

―戻るべき場所は何処、

―無くて当然。

―なぜなら大空なのだから。

―大空は地に足をつけない

―いつも、どこか危なっかしくフワフワしているんだ


―大空に戻る場所などない

―けれど求められているのならば

―応えてやろう

―大空はいつだって





   人々の頭上から

―平等に見守っているのだから―






    「ただいま」
 

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