原作長編

□見えない涙
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もしも


もしもさ、


オレが男じゃなかったら、


先生の生徒じゃなかったら、


うずまきナルトじゃなかったら---




そしたら


何か違ってたのかな---











「…カカシ先生」


サクラちゃんやサイといつものようにフォーマンセルでAランクの護衛任務の最中、オレはこっそりカカシ先生に声をかけた。


「………」


チラリと、見えてる右目と視線が合う。
いつ見ても綺麗な顔立ちだと思う。
口布のせいでほとんど隠れているけど、それでもその下に隠れている美貌は容易く想像がつく。
ついつい見惚れてしまったオレに、カカシ先生は目だけでニコリと笑った。


「っ……」


たったそれだけで心臓がドクドクして、胸がギュッとなる。
赤くなってしまったであろう顔を隠すために、斜め下へと視線ごと顔を反らした。


「…今日、行くから」


そんなオレの態度で察したのだろう。
然程気にすることなくサラッと言ってのけた先生に、オレの心がツキンと痛んだ。


「……おう」


少し震えてしまった声をどう思ったのだろうか。
いや、きっと気にも留めてないんだろう。
カカシ先生にとっては、オレなんかそんな程度の存在。
すぐに元の位置に戻ってしまった視線がその証拠。
オレが何を思おうと、感じようと、先生には関係ないんだ。


「待ってるってば」


一生懸命いつもの笑顔を作って返事をしたオレにもう一度チラリと視線を寄越してから、それきり、解散までの間会話は任務のこと以外何もなかった。











(遅いってば……)


家に帰ってから、オレは特にすることもなくカカシ先生が訪ねて来るのをずっと待っていた。
一応約束はしたのだから、来てくれるだろう。
何時にとは言ってなかったから、具体的な時間までは分からないけど。
もう23時を回ってしまった時計を見ながら、はぁ、と溜息を吐いた。

それでも来てくれることを期待して待ってるオレって……


(バカみたいだってば…)


ベッドに腰掛け窓の外を眺めながら、月明かりの中に銀色を探す。

いつ来てもいいように、帰ってすぐに風呂に入っておいた。
汚いままじゃ嫌に決まってる。
土埃だらけで、汗だってたくさん掻いた。
カカシ先生は嗅覚が優れているから、いつもしっかり匂いが落ちる様に気を付けて丁寧に洗ってる。

少しでもオレの…

男っぽい匂いを消すために―――


(オレってば、何で男なんだろう…)


オレが女だったなら―――

きっと自然といい匂いがしていたのかもしれない。
もしもの話をしても実際には男なんだからどうしようもないけど、そう思ってしまうから仕方ない。


「はぁ〜……」


再び溜息を吐いて窓へと視線を向けると、スッとカカシ先生が姿を現した。


「よっ」


一瞬にして高鳴る鼓動。
ドクドクと煩い音が先生にまで聞こえてないかと不安になったが、どうやら大丈夫らしい。
カカシ先生は片手をあげて何の了承もなく窓から入ってくると、脱いだ履物を丁寧に玄関へと持っていく。
いちいち持っていくなら、最初から玄関を使えよ、と言うのはとっくの昔に諦めた。
何度言ってもカカシ先生が窓以外から入ってきた試しがないのだ。

一連の動作を目で追いながら、部屋に戻ってきた先生がベッドに腰掛けるオレの目の前に立ったのを、ただぼんやりと見上げた。


「……ナルト」

「せんせー…」


名前を呼ばれて、無意識に返した。

これが合図だ。
目をスッと細め、左目を覆う額当てを外すと、カカシ先生がオレの肩に手をかけた。
そのまま後ろのベッドへと体を倒される。
ボスっという音が耳から入ってきて、脳まで響く。
今からここで行われるであろう行為に、オレは無意識に息を呑み、ベストを脱いでいる先生を見上げた。


「2日前にヤったばかりからそんなに前戯はいらない、かな?」


そう言って、カカシ先生はオレのズボンに手をかけた。
そのまま下着ごと足から抜き取ると、下半身が露わになる。


「っ…」


何度体を重ねても、恥ずかしさだけは一向になくならない。
先生は耐えかねて前を隠そうとしたオレの手を素早く掴むと、そのままシーツへと縫い付けた。


「はい、手はココね。お前は大人しくしてなさいって」


言うやいなや、先生はオレの左足の膝裏を持つと、グイッと上げた。
嫌でも秘部を曝け出す体勢に、咄嗟に手が出そうになったオレに、カカシ先生は目でダメだと訴える。
仕方なく我慢して恥ずかしさに耐えていると、スッと、先生の綺麗な指が奥まった部分に触れた。


「あ…!」


思わず声が漏れ、咄嗟に唇を噛む。
わなわな震えているのは、この後の行為に対する期待ではない。


「力抜いてろよ」


―――グッ


「くぅっ…!」


一本、カカシ先生の指が体内に押し入ってきた。
先日受け入れたばかりだとはいえ、元々そういった行為の為にある器官ではないそこは、もちろんすんなり異物を受け入れる筈もなく、ただただ痛みだけがオレの体に走った。


「ぁ…い、た…ぃ……っ!」


頭をベッドに押し付け、歯を食いしばる。
先生にもオレが痛がっているのが見えているはずなのに、その指が動きを止めることはない。
奥まで無理やり押し込まれると、グイッと中で折り曲げられた。


「ぅ…あ゛……」


指が前立腺を掠め、僅かに快感が走った。
それを先生が見逃すはずもなく、2本目の指を無理やり入れると、今度はそこをダイレクトに刺激してくる。


「ハ…ぁぁ……うあ…!」


痛いんだか気持ちいいんだかわからなくなって、無意識にシーツを握り締めた。


「…ナルト、ここ、触ってないのにもう勃ってるよ」


クスクス笑う先生を睨み付けると、体内を蠢いていた指が一気に抜かれた。


「ア…!」

「そういうとこ、結構好きだよ」


“好き”


その言葉に一瞬体が強張る。

カカシ先生にとっては何の意味もない台詞かもしれないけど、オレにとってはそうじゃない。
例え意味は違えど、好きという言葉に反応してしまうのは、オレがカカシ先生のこと、好きだからだ。
それを分かっていて言っているのか、フッと笑った先生が服の上から自身を後孔に押し付けた。


「欲しいんでしょ?ナルト…」

「……っ」


(違う…!オレが欲しいのはそんなモノじゃないってば…!)


胸の奥が締め付けられて苦しい。

なのに、押し付けられた熱に、オレの体は意識とは別にビクリと反応してしまう。
今から来るであろう痛みと快楽に耐えるかのように、ギュッと目を瞑った。


―――ズッ


「――っぁああ…!!」

「くぅ…っ」


予想していたよりもリアルな痛みが体を突き抜ける。
あまり慣らしてもらえなかった後孔の入り口がヒリヒリと痛い。
もしかしたら切れてしまったのかもしれないと、どこか他人事のように思いながら、襲い来る痛みから何とか逃れようと、自由な方の足でシーツを蹴った。


「こら、お行儀悪いでしょ」

「ア!やっ!…ぐっ、ぅう゛、あ゛ぁぁああ」


抵抗していた足を捕えられ両足を抱え込まれると、上から体重をかけられる。
先程よりも深く繋がり、痛みに体が震えた。


「せ…せぇ!…った、い!…ぁ、ヤ…だ…っ」

「すぐに気持ちよくなるから」


オレのことなんかお構いなしに、先生は腰を引いた。


「ぁ…やめ…てっ」

「大丈夫だよ」


一体何が大丈夫なんだろう。

言い聞かせるように囁かれると、先生のモノが勢いをつけて一気に最奥まで入ってきた。


「ぐっ!――ぁああ?!…ハッ、い…あぁっ」


あまりの痛みに見開いた涙が零れ落ちる。
オレの苦痛に歪められた表情が見えているのにも拘らず、カカシ先生は動きを止めてはくれない。
自分の良いように腰を打ち付けてくる。

それでも段々と快感を拾い始めたオレは、もしかしたら淫乱ってヤツなのかもしれない。


「あ…ァ…はっ…せんせぇ…っ」


弱いとこを突かれれば、後はもう快楽しかなくて―――


シーツを掴んでいた手を先生の背中に回そうとして宙に浮いた手を、オレはハッとなって元の位置へ戻した。





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