魔王都物語
□五章「とある刺客…?」
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「飛龍くん。この人、誰?」
「全然知らねーんだけど、俺…。」
美奈の的確なツッコミに、こちらもはっきりと応えた。
基本的にこの世界に知り合いなんて、クソジジイ以外、誰も居ないし…こんな知り合いなんてあっちにしろ居て欲しくない。口に出さずに飛龍は密かに思った。
一方、銀髪の男は飛龍達が、コソコソと話している様子を見て首を傾げて焦り出していた。
「えっ?ちょっと…キミ達?話を聞いてる?」
『もしも〜し』と声をかけてくる。一瞬、このまま知らないフリをしようか…と美奈と話していたのだが、スルーも出来ないだろうし返事をしてみる。
「…アンタ。誰?」
単刀直入に返事というか、疑問をぶつけていた。するとソイツは、『フンッ』と威張るように腕を組み…
「人に名前を聞くときは自分からじゃね〜の?」
ニッと笑いながらそう言うのだ。…ハッキリ言っても良いだろうか?コイツ、俺とは絶対に合わない!確信を持ちながら、飛龍は負けじと睨みつけた。
「怪しい野郎には名乗る必要はないって、親に教えて貰った」
睨み合いの攻防が、そこから始まった!端から見れば何をしているのだろうか?…と物凄い眼で見られていたのかもしれない、…いや、見られていたのだ。だが、ここまでくれば両者、男の意地!飛龍は、名乗ったら負けな気がして仕方がなかった。そうこうしていると、『はぁ…』とワザとらしい程の大きな溜息が相手から聞こえてきた。
「はぁ…、可愛いお嬢さんに免じて名乗ってやりますか」
『仕方がない』と言わんばかりの言い方をして、男は美奈にウインクをする。
「俺の名前はケイマ。ケイマ=キサラズ」
ケイマは、顔に『ふふーん』と名乗りました!と書いてあるように見えた。相手が名乗ったからには、こちらも名乗らなきゃな…。そう思い飛龍が口を開こうとすると……
「あ、良いよー。名乗んなくても。」
軽い口調でニッと笑いながら、こう続ける。
「アンタが飛龍。お嬢さんが美奈…だろ?」
「!?」
「なんで?」
二人共、名乗ってもいないのに、名前を言われ驚いていると…何食わぬ顔でケイマは、今までのやり取りが無駄だったと指し示す事を言い出した。
「お嬢さんって目立つんだよね。異国の服かな?俺の見てきた国なんかじゃ見たことなくてね。」
美奈の服装はワンピース…。確かに、この世界では同じ物を見た事がない。飛龍は納得した。
「まあ、そんな服を着た可愛い子なんて見逃す訳にはいかないじゃん。しばらく見てる内に会話が耳に入っちゃった訳さ。」
ウンウンと「可愛い子は見逃せない主義だからねー」と真剣に頷くケイマ。