魔王都物語
□五章「とある刺客…?」
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…まず、何に対してツッコもうか?飛龍は呆れながらそう思った。良く見れば、どう対処して良いのか不明なケイマに、美奈も困惑している。二人とも困り果てていると、『おっ!』という顔をしてケイマは手に持っていたフリルの付いた服を美奈に手渡した。
「踊り子さんの衣装。何処かで逢ったら見せてね?」
そして、飛龍の横を通り過ぎる寸前にポツリと耳元でつぶやくのだ!
「近いうちにまたね?勇者くん」
「!?アンタ、なんで、ソレを?」
どうして知っているのか?そう振り返るが、ケイマの姿は人混みの中に消えて見つける事は出来なかった。
「…一体、何者なんだ?」
ケイマという名前しか知らない…奴…。どうして彼が勇者の事を知っているのか…?もしかして、魔物なのか?どう考えても、当の本人は消えて分からないのだ。『んー』と飛龍は真剣に考え込んでいた。
「大丈夫?」
美奈は心配そうに、下を向く飛龍の顔を覗き込んだ。
「ん?あ…ぁ、大丈夫。それより、さっさと買い物済まそう」
考えるよりも行動だ!飛龍は自分に言い聞かせ、美奈にそう言った。
「うん、そうだね」
「まずは支払わないとな」
よしっ!と意気込んで、懐にあった金貨が入った袋を掴む…が、あるはずの袋が無いのだ…。無いはずがない…。飛龍は首を傾げ、自分の身の回りを探すが全くもって見当たらない。
「?何処だ?」
「落としたの?」
美奈に言われて、落としたか、どうか記憶を一つ一つ辿り始めた。記憶は店に入った時まで確実にあった事を告げる。…つまりは、その後…。そう考えると、思い当たる節が一つだけあった。
「あの野郎か?」
飛龍はあのケイマの姿を思い出して周りを探す。犯人は確実に現場に戻って来る!そんなドラマのような事がある…淡い期待を抱いたが意味は無かった。
「どうしよう?飛龍くん」
何気に落ち込む飛龍に美奈は、困りながらそう聞いた。
「…一先ず、ユウが来るのを待とう…。アイツなら俺らを発見出来んだろう」
今の状態での最善の策はそれだろう…飛龍は頷いていた。
「えっ!こんな人が多いのに?」
「ああ、召喚魔ってので見つけるらしい。ちなみに、召喚魔はペットみたいなもんだぜ」
驚く美奈に得意げに話す飛龍。調子に乗った飛龍は、ユウが到着するまで召喚魔について語り始めていた。
「召喚魔は、それぞれに種類があるんだ。日常生活での手助けをしてくれるやつ、戦闘を得意とするやつ、援護や回復を得意とするやつ…他にもたくさんだ」
「ふ〜ん、凄い便利そうだね。ちなみに、ユウさんが使ってるのはどんなの?」
「ああ、それは…」