魔王都物語
□五章「とある刺客…?」
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飛龍がそう言うと、大気を揺らしてコポコポと水泡のような音がするのだ。美奈もその音に気が付き、辺りを見回すがこんな街中に水気のある場所は無い。
更に、他の人間には聞こえてないらしく平然としているのだ。
「何?」
美奈はキョロキョロと見回しながら、飛龍に寄り添う。そんな美奈を安心させるように笑いながら飛龍はこう言った。
「怖がんなくても大丈夫だよ。ユウの召喚魔の一つだ」
「えっ?」
美奈が首を傾げるのと、ほぼ同時にチャポン…と、水の中に何かが落ちる音がするのだ。それは音だけではなく、何もない宙に波紋を作り出していた。
目の前で起きている事が不思議過ぎてついていけないのか、美奈の頭上にはハテナマークがたくさん付いている。もちろんだが、召喚魔を初めて見た飛龍も美奈と同じ状態に陥ったのは言うまでもない。
「出てくるぜ。スイウリィ」
ザブンッ!
波紋の中から、波のような音を立てて現れたのは…上半身が青い肌をした人間、下半身が魚のようなヒレがついた、そう、まるで人魚のような…手に乗るくらいの大きさな少女だった。
「お二方、ご無事でしょうか?」
少女…いや、召喚魔・スイウリィは礼儀正しく頭を下げ、そう口を開いた。
「大丈夫だよ。それより、ユウって…「か、か、可愛いっ!」
ユウが来るのか飛龍は確認しようとしたのだが、美奈に遮られてしまった。美奈は目を輝かせてスイウリィに近付き…
「撫でても良いですか?」
そう聞くのだ。スイウリィは戸惑いながら、フラフラとして観念したように美奈に頭を向けていた。
「どうぞ」
「失礼します!」
撫でている美奈は何故か幸せそうな顔だ。飛龍は止めるにも止められず…、異様な光景を眺める事にした。
「…にしても、スイウリィは主人に似ても似つかないよな…」
ポツリと呟いた独り言だったが、実は一人じゃなかったらしい…。
「そうか、私とスイウリィは似てないか」
「………ん?…」
飛龍はその聞き慣れた声に振り返った。
「どうやら、また、問題を増やしているらしいな」
ニッと笑いながらユウは飛龍のすぐ後ろにいたのだ。
「ユウ!色々、話せば長くなる!けど、今は、先にお金が必要なんだ!」
説明は後にするとして、飛龍は美奈の服を買える分を渡して貰おうと必死に言った。すると…
「ほら、やるよ」
なんともあっさりと、先程より大量に入った袋を渡すのだ。
「こんなにあったのか…」
「こんなに?それだけではこの先、全く足りないぞ。食料を買ってすぐに底をつく」
今、サラリと大変な事を言った気がするぞ…。飛龍は確認する為に、聞き返していた。