魔王都物語
□五章「とある刺客…?」
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「ユウ、ソレって、一文無しになるってワケ?」
「そうだな」
飛龍の言葉になんの事なく、ユウはごく普通に頷く。食料を買ったら一文無し…。つまりは、この先、どうにかしてお金を稼がないと宿も食料も無しという事になる。非常にピンチな状況だ!
「どうする気だよ?」
「どうするも何も…。前に話したが魔物の毛皮を採って売るか、退治依頼を受けるかしないと…」
ユウは『お手上げだ』と、両手を上げて首を横に振る。
「…何かあれば…」
真剣に飛龍が悩んでいると…
「ユウさん!飛龍くん!」
スイウリィに十分触って満足したらしく、美奈はスッキリした顔で駆け寄ってきた。美奈の後ろからは、グッタリとしたスイウリィがゆっくり向かってくる。
「ご苦労だったな。スイウリィ」
ユウがスイウリィに声をかけると、スイウリィは軽くお辞儀をして消えていった。
一体、どんな仕組みなんだろうか?飛龍にとって不思議で仕方なかった。
「二人共!見て!」
ジャジャーン!と、そう言いながら美奈は飛龍達に一枚の紙を見せた。
「勝ち抜き?」
「武道大会?」
その紙には、堂々たる文字で『勝ち抜き武道大会』と書いてあり、なんと下に優勝賞金の文字があったのだ!
金額が書いていないのは怪しいが、このまま一文無しの道をまっしぐらに、走るよりはマシかもしれない。それに、武道大会であればユウが絶対に優勝してくれる…!そう頷いて飛龍はユウの方を向いた。
「ユウ!コレに出てくれよ」
拝むように飛龍は頼む。しかし、ユウは『はぁ?』という文字を顔に表していた。
「なんの為にだ?金を無くしたのはお前だろう?責任をとってお前が出場して優勝しろ!」
『優勝出来なきゃ、働いて稼げ!』と口には出さないが目でそう言うのだ。
しかし、まあ、責任問題としては自分が取らなきゃいけない。その自覚もしっかりしている…が、自分に力が無いのも自覚している。だから…
「…けど、俺じゃ、優勝出来るワケないし…」
「自分の実力を知る良い機会だと思うがな…ハァ…」
「じゃ、二人とも出れば良いんじゃない?」
どっちも譲らない重い空気になり始めた、そこに、なんともごもっともな意見が美奈から出てきてしまった。
意見を出した美奈はニコニコしながらこう続ける。
「私は出れないし、飛龍くんもユウさんも戦えるんだし…二人で出れば優勝する確率も上がる!ねっ!?」
「それは、…まあ…」
美奈の言葉に飛龍とユウは顔を見合わせ、『やれやれ』と溜息を吐いた。二人の考えは同じ…、飛龍は口を開く。
「出るよ」