魔王都物語

□五章「とある刺客…?」
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そう頷き、大会会場に行く決心をつけたのだ。紙に書いてある会場に向かう途中、美奈が思い出したように口を開き…勾玉をユウに手渡した。


「ユウさん。コレ、渡すように頼まれました」


「?」


勾玉を手にしたユウは、一瞬難しい顔をする…。


「どんなヤツだった?」


「えーと…綺麗な女性でした」


「…綺麗な女性?男じゃなかったか?」


「はい、どうかしたんですか?」


頼んできた相手が『綺麗な女性』だと聞くと、ユウは怪訝そうな顔をして悩み始めるのだ。何かあったのだろうか?と、美奈は心配しながら首を傾げた。
ユウは美奈の心配に気が付いたのか、『いや』と首を横に振り…


「行こう。飛龍に置いて行かれてしまう」


…とまた歩み出した。前に足を進めるユウは、勾玉をずっと寂しげな表情で見つめている。
そんなユウに、何も聞く事が出来ずに美奈は追いかけるだけだった。



紙に書いてある場所に着くと、ザワザワとかなりの人数が集まっていた。よく見ると、遠くにサーカステントのようなものが立っている…アレが会場だろう。
それにしても、あまりの人数にテントの入口すら人でゴチャゴチャしている。こんな人数で会場の中に入るのだろうか…。飛龍はそんな心配をしていた。


「すんご〜い!なんだか迷子になりそうだね〜」


その隣で美奈は、他人事のように迷子発言をするので、呆れながら飛龍はツッコんでいた。


「迷子になるなよ…、絶対に!」


「大丈夫だよ〜。こうしているから」


美奈はニカッと笑いながら飛龍に近づき、服の袖を掴む…。


「な""っ…!」


きっと、何気なくやっている美奈の行動に顔を真っ赤にしながら飛龍は固まってしまう。もちろんの事、恥ずかしさからである…まあ、半分は嬉しいというのもあるが…。しかし、身体は恥ずかしさを表明に出してしまい固まっているのだ。
なんだか、甘酸っぱい雰囲気が漂わせている二人に『コホンッ!』と咳ばらいが入る。


「頼むから、人の目を考えてやってくれ」


飛龍はユウにそう言われ、更に顔を赤らめて俯いた。


「わ、悪い」


呟くように言うと、ユウはそれ以上はツッコむ気ないらしく何も言わない。

………?…本当に何も言わない?いつもと違う何かに気が付き、飛龍はゆっくりと顔を上げた。


「…ユウ?」


…そこに先程までいたはずのユウの姿はなかった。更に、いなくなったのはユウだけではない!傍にいた美奈も…、ズラリといた人もいない…自分一人になってしまったのだ!
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