魔王都物語

□六章「ラスム領へ」
1ページ/13ページ

『第六章 ラスム領へ』


バキッ!…

白昼の街中で、ケイマの顔にユウの拳がめり込んだ。行き交う人達は、『何があった?』と首を捻りながらこちらを向いている。
飛龍はそんな二人を見ながら、何故こうなったか思い返していた。


ケイマから美奈の居場所を聞き出した飛龍とユウは、急いで宿に向かっていた。ケイマから、なにもなく無事だと聞いていたが…飛龍の気持ちは己の目で確かめないと気が済まなかった。


「美奈!」


宿に到着するなり飛龍は駆け出し、手当たり次第部屋を捜し回った。


「美奈!居るか!?」


「飛龍くん!?」


自分の声に応える声がする。飛龍は、やっとの事で美奈が居る部屋を探しだしたのだ。
声からしても元気そうだ…、良かった…と喜びながら飛龍は、美奈の姿を確認する為に部屋に入った。そして…


「…………」


美奈の姿を見て、飛龍は固まってしまう。


「飛龍くん?どうしたの…?」


あんぐりと口を開けて、停止している飛龍を心配して美奈は声をかけていた。


「どうしたって…お前の格好の方がどうしたんだよ!?」


美奈から目を逸らして飛龍は服を指差した。
…何故、飛龍が目を逸らすという行為をしながら指差したのか?それは、美飛の服に問題があったのだ。美飛の格好は、ケイマがあの時に渡した…スケスケのフリフリな【踊り子】の衣装だったのだ。
おかげで飛龍は、美奈を直視出来ずにいた。…そんな飛龍の気持ちを知るはずもなく、美奈はニコニコとクルリと回って見せた。


「可愛い服だよね?…私には、あんまり似合ってないけど…」


美奈は苦笑しながらそう言った。
…いや、そんな事はないっ!むしろ、可愛いし似合っている!…なんて、恥ずかしくて…言えなかった。
なんとも気まずい空気に、丁度良く助け舟…ユウがやってきた。


「おい、飛龍。ちゃんと部屋を確認してから入るようにしろ!おかげで、私が謝りに行って……?…どうした?」


ユウは飛龍に対して文句を言いながら入ってきたが、美奈から顔を背けている飛龍を見て首を傾げた。何があった?と、全く状況が読めていないユウ…。
その姿を見た飛龍は、頼むから男心に気が付いてくれっ!心から願った。
飛龍の願いが届いたか…


「美奈。体を冷やすぞ。」


そう言いながらユウは美奈に、近くにあった毛布を羽織らせた。
こ、こ、これで、大丈夫だ…ありがとう!ユウ!飛龍は安心と感謝の気持ちでいっぱいになっていた。


「ありがとうございます。」


美奈はペコッと頭を下げてお礼を言った。…男にも見えるユウが美奈に羽織らせる。あまりにも紳士的で絵になっていた。二人のやり取りをしていると、なんだかカップルにも見えてしまう。飛龍はそんな事を考えていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ