魔王都物語

□一章「異世界」
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 『 第一章 異世界 』


俺が幼い頃に祖父がよく旅の話をしてくれた。祖父は世界を駆け巡る探険家で、嘘のような摩訶不思議な話をしてくれた。

幼い頃に信じていた話も大きくなるにつれて、バカバカしく思えてきて忘れかけていた。

…けど…

ある日の事がきっかけで忘れかけていた話を思い出す事になった。

それは、俺が高校3年の夏休み…



「飛龍!掃除、終わったの?」


「うるせーよ、終わっているって!」


家族全員が休みだからといって、その日は大掃除をしていた。その中、俺は面倒なのでテキトーに済まして自分の部屋で寝ていたのだ。

だが…テキトーにやっていた事が、母さんにバレないはずがなく。俺の部屋を見に来てピクピクと眉を引き攣らせ、怒鳴り
声をあげるっ!


「アンタは、それでやったつもりなの!?もう一度やり直し!ついでに、お祖父さんのも整理しなさいっ!」


「へいへい、了解ー。」


言い訳すればもっと言われるだろう…そう考え、俺はとりあえず返事をした。

母さんが部屋から出て行ったのを確認し…、自分の部屋を眺める…

………


「仕方ない、やるか…」


そう呟き、やり直しを始めた。

もともと、探険家の祖父が使っていたこの部屋は、旅の資料や道具…宝などが潜んでいるはずだ。ただ掃除するだけよりも、金品を探しながらの方が楽しそうだ。

そう考え、祖父の物を一つづつあさる…。

中には祖父の書いた日記や写真…、英語で書かれた手紙など…『宝』とは呼べない物ばかりであった。


「なんだ…、高価なモンはなさそうだなぁ…」


俺はゴロリと横になり、最後に見付けたメモを開く。


パサッ!…


メモをひらくと、間に小さく畳んだ紙が一枚…


「なんだ、コレ?」


破らないようにゆっくりと開いていくと…、ソレが一枚の絵だと分かった。
その絵には、一人の美しい女性が描いてある。更に、紙の裏に『精霊』と書いてあるのだ!


「おいおい。お伽話話か何かか!?」


不思議に思いながら、メモを見ると…真偽を確かめる為になりそうな事が書いてあった。
それは……


『……蔵に……あの…が…』


大体の部分が読めなくなっているが…、コレは確実に蔵に行かなければっ!と飛龍は確信する。



「蔵に行ってみるか」


なにかが隠されているはずの蔵に、掃除をほったらかしにして駆け出していた。




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