Main

□熱中夜
1ページ/4ページ

「はぁ、はぁ、んっ・・・。はぁ・・・」

密閉空間だったエレベーターを下りると、目の前に自宅の扉が見える。

ようやくの帰宅。

けれど、自宅の扉を開ける前に、違う扉が開かれた。

「っっ〜〜!!」

「ん?大丈夫か?」

豪快な音で扉にぶつかり、しゃがみ込むと扉を開けた主が上から見下ろして来る。

「だい、丈夫な訳・・・、ないでしょ・・・」

「お前、朝より酷くなってんな。・・・仕方ねぇ、ちょっとこっち来い」

「は?じょう、ちょ、ひっぱら・・・、ないで・・・」

縺れる足を何とか動かし、高野さんの部屋へと上がり込む。

品の良いソファーに座らされれば、ズルズルと身体が横に傾く。

朝から続く体調不良が、夜になった途端に悪化した。

荒い息で高野さんを見遣ると、取り合えず熱を測れと体温計を渡される。

大人しく従えば、少し冷たい手が額に当たった。

「今、粥を作ってやるから」

「・・・。ありがとう・・・、ございます」

「・・・。気にすんな」

名残惜しいさを残した冷たい手を見送り、体温が測れた機械を確認する。

『Error』それを見た瞬間、さっきの手の所為だと測り直した。

結果は、38.5度。

寧ろ、知りたくなかったと思う、今日この頃を味わった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ