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□熱中夜
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「はぁ、はぁ、んっ・・・。はぁ・・・」
密閉空間だったエレベーターを下りると、目の前に自宅の扉が見える。
ようやくの帰宅。
けれど、自宅の扉を開ける前に、違う扉が開かれた。
「っっ〜〜!!」
「ん?大丈夫か?」
豪快な音で扉にぶつかり、しゃがみ込むと扉を開けた主が上から見下ろして来る。
「だい、丈夫な訳・・・、ないでしょ・・・」
「お前、朝より酷くなってんな。・・・仕方ねぇ、ちょっとこっち来い」
「は?じょう、ちょ、ひっぱら・・・、ないで・・・」
縺れる足を何とか動かし、高野さんの部屋へと上がり込む。
品の良いソファーに座らされれば、ズルズルと身体が横に傾く。
朝から続く体調不良が、夜になった途端に悪化した。
荒い息で高野さんを見遣ると、取り合えず熱を測れと体温計を渡される。
大人しく従えば、少し冷たい手が額に当たった。
「今、粥を作ってやるから」
「・・・。ありがとう・・・、ございます」
「・・・。気にすんな」
名残惜しいさを残した冷たい手を見送り、体温が測れた機械を確認する。
『Error』それを見た瞬間、さっきの手の所為だと測り直した。
結果は、38.5度。
寧ろ、知りたくなかったと思う、今日この頃を味わった。