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□赤い糸の先
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どう足掻いたとしても、相手の大切な人とやらになれないのなら
せめて、こいつが元に戻れるまで、俺が傍に居て助けてやるだなんて、愚の骨頂を昔に味わった。
だから、お前は知らなくていい。
悪いのは、全部俺だ。
赤い糸の先
(結ばず、切って、離れて、苦しくて)
『だから、それは!!』
『口答えする暇があるなら、立ち位置を考えろ。俺に取って、お前は過去の人物だ。目の前でうろつかれたら、叩き潰したくなる』
『っ!』
何度、言い合いしたとしても、コイツがアイツの大切な人。
何度、何度、何度、繰り返されれば、俺は諦めれるのだろうか?
「ビール、お代わり」
居酒屋の店員にジョッキを掲げると、目の前で煙草に火種が作られる。
「まだ飲むのか?明日、会議だろ?」
「黙れ。ようやく誘いに乗った分際で、俺様に口答えするのか?」
はいはいと軽くあしらう政宗に、鼻を鳴らしジョッキのビールを飲み干す。
温くなった液体が胃に落ち、嫌な苦味に顔をしかめた。
「横澤。お前に聞きたい事が」
「黙れ。解ってる。だが、俺にだってプライドがある」
空のジョッキの外側で、濡れた雫が滴り落ちる。
一粒。二粒。三粒。四粒。
「今まで、俺が・・・。いや、忘れろ。あの坊ちゃんへの態度は、もう少し柔らかくする」
「・・・。すまないな。ありがとう」
「まぁ、また振られたら、見物だな」
軽口混じりに五粒目を数え、親指で雫を拭い去った。