Main

□赤い糸の先
1ページ/4ページ

どう足掻いたとしても、相手の大切な人とやらになれないのなら

せめて、こいつが元に戻れるまで、俺が傍に居て助けてやるだなんて、愚の骨頂を昔に味わった。

だから、お前は知らなくていい。

悪いのは、全部俺だ。



赤い糸の先
(結ばず、切って、離れて、苦しくて)



『だから、それは!!』

『口答えする暇があるなら、立ち位置を考えろ。俺に取って、お前は過去の人物だ。目の前でうろつかれたら、叩き潰したくなる』

『っ!』

何度、言い合いしたとしても、コイツがアイツの大切な人。

何度、何度、何度、繰り返されれば、俺は諦めれるのだろうか?

「ビール、お代わり」

居酒屋の店員にジョッキを掲げると、目の前で煙草に火種が作られる。

「まだ飲むのか?明日、会議だろ?」

「黙れ。ようやく誘いに乗った分際で、俺様に口答えするのか?」

はいはいと軽くあしらう政宗に、鼻を鳴らしジョッキのビールを飲み干す。

温くなった液体が胃に落ち、嫌な苦味に顔をしかめた。

「横澤。お前に聞きたい事が」

「黙れ。解ってる。だが、俺にだってプライドがある」

空のジョッキの外側で、濡れた雫が滴り落ちる。

一粒。二粒。三粒。四粒。

「今まで、俺が・・・。いや、忘れろ。あの坊ちゃんへの態度は、もう少し柔らかくする」

「・・・。すまないな。ありがとう」

「まぁ、また振られたら、見物だな」

軽口混じりに五粒目を数え、親指で雫を拭い去った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ