Main
□さよならの言葉
1ページ/1ページ
例えば、あの人との別れを綺麗にしていたら、今現在、全然まったく必要のない、ちょっかいを出されずに済んだのだろうか?
さよならの言葉
仕事仲間として、尊敬する所は多々ある。
仕事の仕方もそうだし、上司として見習うべき所もある。
だが、しかし・・・。
(この状況は何だ?)
疲労困憊の高野さんが上司権限を発令して、同じく疲労困憊の俺の膝を枕にしていた。
(ホントに、休憩室陣取って何してんだよ、この人)
ソファーの肘置きから長い足を投げ出し、スカスカピーピー宜しく、高野さんが寝入って早15分。
1時間の休憩なので、残り45分これが続く。
「あふっ・・・」
欠伸を零して、口に当てた手を下ろそうとするが、何故か寝入る御仁の上で漂う。
無意識に横髪を梳き、誰かの面影を探した。
彼が、旧姓だった頃の面影を。
「・・・」
(嵯峨・・・、先輩・・・)
好き過ぎて、ダメだった。
些細な勘違いで、色鮮やかな世界を自ら壊してしまう。
そして色を失った世界に佇み、誰もいないのを確認してから、泣き叫んでいた。
誰にも触れられたくない、聞かれたくない、心の叫び。
『どうして、あんなに、すきなのに、あのひとは、おれを、すきじゃないんだ!?』
好意を寄せた分だけ返して欲しかったなんて、エゴでしかないのに、そう思っていた。
「高野さん・・・。俺は、あなたを好きになりません」
一度でも、この人を好きになれば、また同じ事を考えてしまう。
また同じ事を繰り返せば、もう三度目は無い。
だから、好きになりたくなかった。
どうか、分かって下さい。あなたに、さよならだけは、言いたくないんだ。
けれど、足がムカつく程に痺れたのは、後で文句を言おう。