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□数多の選択肢
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自販機で飲み物を買う時、数多の選択肢が用意されている。
先ずは珈琲の種類。
ブラック、砂糖入り、ミルク入りetc。
他にも、水、紅茶、炭酸飲料、ジュース、これもまたetc。
その中で、いつも選ぶのがブラックコーヒー。
いつからだったのか定かではないが、苦いのが大丈夫になった時から、飲み物を買う時は大抵これだ。
メーカーにこだわれば限定される位に、好きになればそれしか受け付けない。
一途と言えばいいのか、面白味が無い奴だと言えばいいのか。
「お疲れ。缶は自分で捨てろよ?」
だから、こうして、初恋の人と再開して、また昔みたいに、胸が高まるのは、ホントに、どうにかして欲しい。
「分かってますよ。一々、言われなくても、缶くらい自分で捨てます」
仕事机の上で自分の好きな飲み物を手渡され、小気味よくプルタブを開ける。
一口で喉を潤せば、誰もいないオフィスで、自分を見詰めていた男に気付く。
「何ですか?」
「いや?お前も、大人になったなと思っただけだ」
「悪かったですね。お蔭様で、大人気ない大人になりました」
突っ掛かるなと苦笑混じりに言われ、言い知れぬ想いを流す様にコーヒーを喉へと送る。
そして、まだ口を開けていない缶コーヒーを弄びながら、高野さんが呟いた。
「あの頃は、お前は無理して、俺と同じブラックを飲んでたな」
「・・・っ!!し、知って!?」
「ん?ああ、知ってるも何も、ブラックを飲む時、眉間に皺が寄ってたぞ?」
自分でも知らない癖を言われ、頭を抱えて目の前の缶コーヒーに苛立ちを募らせる。
(この人の影響だなんて、絶対に有り得ない!!)
「お前、俺の事よっぽど好きだったんだな?」
「寝言は、寝てから言って下さい!!」
多大な影響力を侮っていた御蔭で、俺は一途なのだと認識させられた。