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□言い訳
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いつだって、喚き倒せるし、殴り倒せるし、蹴り倒せる。
けれど、今それをしないのは、何故なんだろう?
言い訳
「い、っ!!・・・や、嫌だ!止めて下さい!」
「何を止めろって?」
「それは・・・、んっ!っ、は・・・っ」
背中には自宅の玄関扉。
目の前には、真っ直ぐに見詰める瞳。
唇が離されるまで何かに縋れば、この人はいつだって真剣な顔で囁く。
「小野寺・・・」
「・・・。やめて・・・、下さい・・・。名前なんか、呼ばないで・・・」
熱を含む声が、耳元で児玉する。
塞ぎたいのに、いつの間にか手は彼に捕われていた。
「もう・・・、本当に・・・。俺の中に、入らないで・・・」
脳内で己が命令するは、自制心を働かせろ。
流されるな。この人は、もう俺の好きな人じゃない。
「下を向くな。俺を見ろ」
ああ、本当に何で、従わなくていい人の命令に、俺は従うのかな?
「・・・あんたなんか、あんた・・・なんか」
多分、瞳に映るその顔が、余裕なく自分を見ている様が、とても胸を締め付けるからかも知れない。
「言えるモノなら、言ってみろ」
空気すら与える積もりもないキスの合間に、この後の言い訳を考えてみる。
(取り合えず、全部、高野さんの所為だ)
そんな言い訳が効くのなら、苦労はしない。
仕方ないから、今回は雨で寒いからと言う事にしよう。
だから、矛盾した言い訳を、そのまま愛して。