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□足跡
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自分の立ち位置は、痛い程に分かっている。
俺は、あの人の部下で
あの人の、恋人ではない。
足跡
(二人の経路)
大学時代に高野さんが付き合っていた横澤さんは、即断即決をモットーにしているんじゃないかと思う位に男らしい。
それに比べたら、俺は女々しくて狡い所が多々ある。
過去の事に縛られているのは両方だが、今現在、高野さんを縛っているのは、曖昧な俺の態度。
『お前、嫌いな奴と何度も寝んの?』
寝れませんから!!当たり前でしょ!?俺を、何だと思ってるんですか!?
何て言えたら、また話がややこしくなるので黙っていたが
(心外だ・・・)
他の事でもグルグル悩み、別の事でもグルグル悩む。
口から言葉が放れれば楽にはなれるが、如何せん自分の言葉には嘘が混じったりする。
『素直に言えば良いものを』
すいませんね!全部、あんたの所為ですから!
これまた、話がややこしくなるフラグが、チラホラと生まれる訳だ。
「・・・」
揺れる電車の中、思考を占めるのは、あの人ばかり。
暗い車窓に映し出された俺は、何と情けない事か。
「・・・バカかよ。俺・・・」
どうして一日でもいいから、高野さんの事が頭から消えないんだろう。
藍色に包まれた電車の中、高野さんとの足跡を思い出しては、溜息だけがこぼれ落ちた。