短編
□それでも俺がいいんだろ?
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*高杉晋助*
「あーあ何でだろうなぁ。」
「あ?」
「何であたしはこんな奴と付き合って毎日一緒にいんだろ。」
「...いきなり何言いだすんだオメェ。」
「オメェとかないよなー。彼女呼ぶのにオメェはないよなー。」
「何が言いたい。」
「あたしはさー晋助って一回一回に愛情こめて呼んでんのにさー。」
「キメェ。」
「なのにこの通り...。ハァー。」
「あからさまに溜息吐くんじゃねェよ。」
「言うこと全部上から目線で偉そうだしさー。」
「おまえも変わんねェだろうが。」
「そう?あたしはいつも晋助を労わってますよ。あ、ちなみにさっきも愛情込めたよ。」
「キメェ。」
「ハァー...。」
わざと嫌味ったらしく大きく溜息を吐く。
でも本当に溜息一つくらい吐きたい気分なのだ。
「あたし達ってさ。」
「あ?」
「将来結婚すんのかな。」
「さァな。」
「する気ある?」
「どうだろうな。」
将来、夢、未来――
自分がこれからどういう人生を送っていくのか。
まだ果てしなく続く人生はどのようなものになるのか。
これから十年後、二十年後自分は心から笑って幸せと言えるのか。
柄にもなく考えてしまった。
本当に柄でもない。
小さいころからの夢なんてない。
就きたい職業もない。
小学校に入学してなんとなくバスケを始めて、中学校に入学してなりゆきでバスケを続けて、適当に行けそうな高校に受験して受かって、流れでバスケを続けてる。
何の変哲もない人生。
なんとなく、何気なく過ごしてきた日々の中で、一生の思い出と呼べるものなんてあっただろうか。
「晋助はさ。」
「あ?」
「なんで今まで生きてきたの?」
「死ねって言いてェのか。」
「そうじゃないけど...。」
「命貰ったからからじゃねェのか。」
「...?」
「ババアが腹痛めて産んでくれた命だろうが。そんな簡単に捨てていいもんじゃねェだろ。」
「マザコン?」
「殺すぞ。」
「また殺すとかそういうこと言うし。あたし死んでも哀しくないの?」
「どうだかな。」
「冷たいよー。この人南極で産まれたんじゃないのー。」
優しい言葉なんて今更だけど、たまに恋しくなるのだ。
偽善でも何でもいいから優しい言葉をかけてほしいときがある。
他の人はわからないが、あたしはそうだ。
今更晋助にそんなことは望まないけれど。
「俺ァ今更この性格変える気なんざねェし、おまえに優しい言葉なんざ吐けねェ。諦めろ。」
「うん、すでに諦めてる。」
「そんなに欲しけりゃ他の男のとこを当たればいい。臭ェ台詞の一つくれェおまえなんかにも吐いてくれんだろ。」
「さりげなく失礼だよね。」
「俺より優しい奴は腐るほどいんだろ。器用な奴もな。」
「自分が不器用なのはわかってるんだ。」
「俺は何を言われようとおまえに対する態度も変える気はねェ。」
「何気に偉っそうだよね。」
「些細な気遣いなんてできやしねェし、気付きもしねェ。」
「気にしてるんだ...。」
「それが嫌なら俺から離れりゃいい。」
「.......。」
「まァ、おまえは
それでも俺がいいんだろ?
「さらに自意識過剰で自分に自信があるよね。」
「なら俺から離れられるか?」
「無理。晋助にはあたしが必要でしょ。」
「似たようなもんじゃねェか。」
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