ナギの部屋
□★長編★〜Fate〜(ナギの過去のお話)
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親の顔?
そんなの知らねぇ。
愛?生きるのに必要か?
物心着いた時には山賊として生きてた。
奪い、傷付け、傷付けられる日々。
罵声、怒号、悲鳴、銃声…それらが子守歌だった。
何かを奪っては戦う日々…。
俺は山賊として生きていく事に何の疑問も抱かず、そんな日がずっと続く
と思っていた。
運命のあの日が来るまでは…。
今から約10年程前の事…
「出たーっ!!山賊が出たぞー!」
静かだった山に突如響く悲鳴、それと同時に銃声が鳴り響いた。
以前から、この山を根城とする山賊が、旅人や、軍の補給部隊を襲うため、軍は警戒を強めていたのである。
「隊長!敵の数は頭を筆頭に約20人程です!発砲許可を!」
若い兵士が隊長に駆け寄った。
「うむ。噂に聞く山賊どもか、今日こそ全員縛り首にしてやる!」
隊長が右手を高く上げると、兵士達は山賊達に向けて一斉に発砲した。
パァンパァンパァーン
銃声が響き、あたりは硝煙の煙と臭いに包まれ、敵味方入り乱れの乱戦となった。
煙のせいで視界が悪く、戦闘状況は不明になった。
煙の中からは、仲間の悲鳴と誰かが倒れる音。
何かジャラジャラとした金属音しか聞こえない。
「隊長!気をつけて下さい、あいつら中にものすごく腕の立つ男がいて、仲間が既に半数戦闘不能で…ギャッ!」
ヒュッと風を切る音が聞こえたかと思った瞬間…
隊長のすぐ傍にいたはずの兵士がいきなり後ろに吹っ飛んだ。
「どうした!?何が起きてる?!味方は味方の数は?!敵は倒したのか?!」
思った以上に手強い山賊を前に、隊長は急に焦りを見せ始めた。
その時、突風が吹き、硝煙に煙っていた戦場の視界が急に開けた。
「何だ…これは…。」
隊長が見た光景。
それは倒れた仲間の傍に佇む一人の男…。
いや、端正な顔立ちにまだ幼さが見える。
歳の頃は15、6位の少年か。。
しかし、その眼光には鋭い光を帯び、少年の手には不釣り合いな、鎌のような武器。
「お前、お前がやったのか?!」
隊長が動揺を隠せず尋ねる。
周りを見れば、既に戦場には隊長以外立っている味方の兵士はいない。
少年の後ろには仲間の山賊達が、まるで見世物を見るかのようにニヤニヤと二人のやり取りを見ている。
「ナギやっちまえー!」
「ぶっ殺せー!」
背後の山賊達がヤジを飛ばし始め、中にはどっちが勝つか賭ける者もいる。
ナギと呼ばれたその少年が、隊長にゆっくりと向き直り、手にしている鎖がジャラジャラと彼の手でゆっくりと回り始めた。
どうやらこの少年は鎖鎌を使うようだ。
「ま、待ってくれ!何故君のような子供が山賊に?!もし奴らに脅されているなら、私が力になろう!」
隊長が少しでも説得を試みようと、話かけるが、ナギの表情は変わらない…が。
ただ一言。
「…悪いな」
再び風を切る音が聞こえた。
この言葉を隊長が聞いたかどうかはわからないが、彼が次に目覚めたのは、病院のベッドの上だった。。。