拍手連載
「じゅにあ すうぃーとはぁと2」
隣のお兄ちゃん・政宗×中2男子・幸村
幸村は昼を友達と一緒に食べていた。
朝は政宗の叫びが聞こえた気がしてソワソワしていたが、メールも来てなかったので安心して授業を受けたのだった。
「幸ちゃんのお弁当、とーても美味しそうです」
「鶴殿…今日は小太郎殿と一緒ではござらぬので?」
「はい!たまには女子会に参加しなくては。友達を疎かにしてはドドーンとお仕置きされてしまいます」
意味の分からない擬音語で話す鶴に苦笑を浮かべる。
クラスの人たちから女子会にツッコミがないのは幸村が可愛らしい顔をしているからに他ならないのだが。
「プラス1にござるよ」
「幸ちゃんは女子でもいける…」
当の本人はいつも訂正を入れてのんびりしていた。周りも生暖かい目でそれを見守る。
そんな中、市が幸村の携帯が震えているのに気付いた。
「幸ちゃん、携帯…」
「ホントにござる。あ!政にぃ!」
いそいそと携帯を開く幸村。政にぃ、と嬉しそうな幸村の声を聞いた女子諸君が思うことといえば。
【可愛い顔。けどあのショタコン男がさせているって思うと…】
【些か殺意が沸いてくるな…】
政宗に対してあまり良い印象がないようだ。
市は既にノートに政宗暗殺計画なるものを制作しているほどだ。勿論、実行係は孫市とかすがだが。
しかし例外は付き物。三人に賛同せず、幸村の様子を微笑ましく見つめる娘(こ)もいる。
鶴は目には見えないハートを撒き散らして会話に耳を傾けていた。
「政にぃ、どうしたの?」
『今日、迎えに行けそうにねぇんだ…』
「そっか…」
幸村はしょんぼりしている。
政宗が帰ってきてからは毎日欠かさず迎えに来てくれた。それを幸村は密かに楽しみにしていたのだ。
耳があったら力なく垂れていそうなほど落ち込んでいた。
『で、わりぃんだけどよ。こっちに来てくれねぇ?そっちに行くのは遅くなるから無理だけど、心配だし…』
「行っていいの!?」
政宗の言葉を聞いた幸村は一瞬にして元気を取り戻していた。
内心ウッキウキだ。
政宗と帰れる。ただそれだけが嬉しい。
「じゃあ、授業が終わったらすぐ行くね」
『おう。Thank you、幸。お詫びにケーキでも奢ってやるよ』
「ホント!やったぁ!」
『あぁ。何だったっけ、前に幸が食べたいって言ってたケーキ屋行こう』
「絶対だよ!政にぃ大好き!じゃあまた放課後ね」
満面の笑みを浮かべて携帯をしまう。
そんな幸村に友達三人は政宗暗殺計画を推し進めることを決めたのだった。
そんなことを知らない幸村は政宗と過ごす放課後に想いを馳せるのだ。
なんせ3年離れていたのだ。
去年帰ってきたといっても政宗は受験生。いくら政宗が成績優秀だと言っても、遊びに行く余裕などない。それに今は中学、高校と離れてしまっている。
政宗には政宗の友達、幸村には幸村の友達がいる。時間が合うことなど殆どないに等しい。
【政にぃと食べるケーキ、何にしよー】
ニコニコしながら授業を受ける幸村に教科担任が不思議な顔をしていたのは言うまでもない。
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