novel

□感知と対峙
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感知と対峙


触れたら切れてしまいそうな殺気を放ちながら、歌舞伎町の繁華街より少し外れた閑静な住宅街を高杉は闊歩している。
切れた口先を舌で舐め取りながら少し赤く腫れた左頬に手を当てると、先程までの出来事が鮮明に脳裏を駆け巡る。



久し振りの江戸に気が舞い上がり過ぎたのだろうか。
将軍様々が祭りに面出すってからには、それなりの御持て成しの準備をしていた。だから義勇軍だった三郎の親父に唆したまでは順調に事が進んでいた。
しかしそこに、まさか白夜叉の銀時が居るとは思いもよらなかった。
その上幕府の犬共と祭りの邪魔までするとは、どこまで落ちた野郎なんだ。反吐がでそうだ。


銀時の野郎、すっかり微温湯に慣れやがって。
情けねぇ。



思い出せば出す程、腸が煮えくり返るような怒りが湧き上がってくる。
あの当時の幕府の弱腰体制も手の裏をひっくり返したような裏切りも、全ての行為に反吐が出る。
ヅラのようにコソコソ隠れて軟弱なやり方も馬鹿馬鹿しくて、手を組む気にもなれない。
この世の中、全てが腐っていやがる。



高杉はこの昂った気持ちを冷ます為、当ても無く住宅街を進んでゆくと、道の先から二人の男が歩いてくる気配に気付く。
グットタイミングな来訪に口端が不気味な程に引き攣り上がる。
むしゃくしゃした気持ちでも晴らそうかと柄に手を掛け、住宅の陰に隠れ気配を消して二人の男が来るのを待つ。
近付いて来た二人の顔が見えた瞬間、高杉は苦虫を噛み潰したような容貌になった。



「お前平賀と顔見知りだっただろ。お陰でこっちは散々だ」
「そんなに怒らないでよ」
「それにこれ以上付いてくるな。ウザイ」
「何?もう我慢できないって?仕様が無いなぁココで一発犯っちゃう?」



全く噛み合わない会話を繰り広がる二人は高杉の気配に気付かぬまま、目的地へと足を運ぶ。
高杉は銀時の姿は確認することが出来たが、もう一人の男が何者なのかが分からずにいた。
しかしどこかで見た事のある面である事は確かではある。
記憶の片隅からやっと掘り起こした名前に、高杉は更に頭に血が昇った。





真選組副長、土方十四郎…
 
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