novel

□貴方と病院へ
1ページ/12ページ

 
貴方と病院へ


真選組副長である土方十四郎は、早朝に何時も日課にしている各社の新聞を虱潰しにチェックをしていた。
どんなに武装警察は他の一般企業とは違うにしろ、世の中の流れや流行を知っておかなくては不味い立場であり、自分達の事が記事に載れば目を通さなくてはいけない。
これでも市民の評判も気にしなくてはいけないのである。
新聞の内容は大抵、流行の商品・サービスの広告や有名アイドルのスキャンダルなどなど、土方にとっては興味の無いものばかりであり、テロ事件についての記事は隅の方に追い遣られていた。
今のニーズに合わせた新聞となるとこういった事が主流である。

土方は山崎が淹れてくれた熱いブラックコーヒーを一口啜りながら、次のページを捲る。
そこには大きな見出しで「貴方の旦那様は大丈夫ですか?忍び寄る糖尿病の恐怖!」と書いてあった。
土方はピタリとページを捲る手が止まり、記事の詳細に目を走らせた。



『近年、流行の一途を辿る代謝疾患。その中でも危険視されるのは糖尿病!貴方の旦那・彼氏の生活習慣は大丈夫ですか?過食・運動不足・肥満…』


土方は記事を読みながら、銀時の顔が浮かび上がってきた。
銀時はパッと見からして肥満体質ではないし、それなりに仕事で運動もしているだろうから、心配は要らないだろう。
何より銀時は元攘夷志士である。
体だって脂肪なんか見えないし、脂肪より筋肉の方がしっかり付いている。


『自覚症状は口渇・多飲・多尿・体重減少。合併症を起こしやすい…』

そう言えば近頃銀時は…
「すげー喉渇いたぁ、多串君の唾液で潤して欲しいなぁ」
とか言っているし、一緒に出かければよくトイレに行くような気がする。
心なしか近頃痩せたような気もするような…


『これらの症状は2型糖尿病と言うが、それ以上に危険視されているのが1型糖尿病である。自覚症状は空腹感・脱力感・動機・震え・冷汗…』


てか、銀時って1型の方も当て嵌まる項目があるよな!
何時も腹空かしているし、年中脱力感がありそうだ。
俺と会っている時だって銀時自身から動機を訴えていたし、よく額に汗をかいているし…


『これらを読んでピンと来た奥様・彼女、まずはお相手を連れて病院へ!』



土方はみるみるうちに眉間に皺か寄っていく。
銀時本人曰く「糖尿病ではありませーん」と言っているが、間違いなく不規則な生活習慣であることは確かである。
既に冷め切ったコーヒーを口に流し込み、大きく喉を鳴らす。

自分も健康に対しては何とも言える立場ではないが、やはり大切に思っている相手が慢性の病気の疑いが有ると思うと、いてもたってもいられないのが心情である。

土方は毎年幕府で決められた健康診断を受けている為、今の所はこれと言って大きな病気は無い。
しかし自営業である銀時は、健康診断など行っている様には見えない。ぶっちゃけそんな金銭面の余裕なんて無いだろう。
土方は一度大きく溜息をつき、頭をガックリと垂らす。





銀時を病院に行かせるか…





一気に残っていたコーヒーを飲み干し、今日一日の仕事に就いて行った。
 
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ