3Z

□遠距離恋愛
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遠距離恋愛


都内では自由な校風で有名な銀魂高校は思いの外人気があり、なんとクラス数はA〜Z組まである巨大マンモス高。
クラス数が多ければ、それなりにクラスに個性が現れる。
その中でも一番個性溢れるクラス、3年Z組は年中騒動の絶えないクラスで知名度を誇っていた。
ここまで、まあこんなに問題児が一つのクラスに集まったもんだと思うほどの面子である。

そして今日も教室は騒がしい


授業は世界史で、ただ淡々と教科書を読むだけのつまらない時間、当然3年Z組の生徒達は爆睡中である。
そんな中、珍しく起きている高杉は真剣な眼差しで一点を見つめていた。
勿論視線の先は黒板でも教科書でもなく、愛しの思い人である土方十四郎。
土方は真面目に教科書の文字を眼で追いながら、重要な部分を赤ペンで印を付けている。
すると突然、土方の隣の席に居る山崎が土方にコソコソと話をし始めた。
山崎が冗談でも言ったのだろうか、土方はクスリと笑い、ノートの端に走り書きをすると山崎もクスリと笑う。
何を言ったのかは分からないが、高杉にとってはとてつもなく不愉快この上ない。



山崎の野郎、隣をいい事に調子に乗りやがって…
土方も土方だ、俺以外の男の前で笑顔を振り撒くなんて。
そもそも俺と土方の席が何故こんなに離れていなくてはいけないのだ!

正しく遠距離恋愛だ…



高杉は「た行」で土方は「は行」の為、二人の座席は離れ離れ。
その上高杉の座席は一番後ろで土方は前から二列目で、高杉の位置からでは土方の背中しか見る事が出来ない。
高杉的には、もっと授業中でも土方の顔を見ていたいし、分からない所を教えてもらったり、昼食を一緒に食べて楽しい話をしたい。
この数mの距離が煩わしい。

ふと、土方は高杉の熱い視線に気付いたのか、教科書から目を離し方口越しにそっと振り返ると、教科書を衝立ている奥から高杉の鋭い眼光が見えた。
まさか土方が振り返るとは思いも寄らなかった高杉は、キョトンと眼を丸くし、恥ずかしそうに教科書に顔を隠してしまった。



また土方は嫌そうな顔してんだろうなぁ…
て、なに弱気になってんだ俺!駄目じゃん!



奮い立った高杉は教科書の衝立を倒し、顔を上げて土方の方へ向くと。


『ばーか』


ニッコリと笑う土方の口元が動く。
窓から注ぐ太陽の優しい日差しが土方の横顔を照らす。
漆黒の髪が輝き白い肌が透き通る姿は、天女のように神々しい。←そう思っているのは高杉ぐらいである。






こんな土方が見れるんだったら、遠距離恋愛も良いかもな…




 
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