novel

□感知と対峙
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京都に潜伏していた時、ヅラの奴が送ってきた手紙の中に入っていた。
写真は不鮮明だが脳裏には鮮明に記憶している。

一枚は独活の大木のような馬鹿面の男だった。一瞬で興味が失せた。

もう一枚は俯き気味の顔からは表情は読み取れないが、真っ赤な薄い唇がタバコを咥えながら微かに微笑んでいるようだ。
漆黒の髪と隊服に白く透ける様な肌が、白黒のコントラストを際立たせる。まるでそこだけモノクロトーンの世界のように…


俺はぼやけた写真に何故か視線が釘付けだった。










漆黒の髪を引っ掴んでみたい。
高いプライドを捻り潰して深紅の唇からヒイヒイ言わせてみたい。
透き通るような白い肌を食い千切って、貪り尽くしたい。
あの俯いた顔の面を苦痛と快楽で歪ませたい。
俺好みに調教したい。



どす黒い欲望が渦巻く。



写真は程なくして燃やして捨てた。





しかし頭の片隅でジリジリと残り火が燻っていた。










外見から見て銀時と土方は知り合いの様であり、銀時は馴れ馴れしく隊服姿の土方の腰に後ろから腕を回しへばり付いている。
一方土方は引き剥がそうと銀時の腕を掴んでいたが、本心から嫌がっているようには見えなかった。

土方は次の十字路で銀時を振り払い、別れを告げて自宅のアパートへ行ってしまった。
残された銀時は、何時もの様に十字路の中央で土方の姿が見えなくなるまで突っ立っていた。
土方の姿が完全に消えると、銀時は髪を一度掻き毟り、のんびりと元来た道を戻りだした。





「銀時。いいモン持ってんなぁ」





不意の一声に、弾かれた様に振り返った銀時は眼を見開いた。
一気に血の気が引いてゆく。
今まで気にもしていなかった、包帯を巻いた左手の平の傷口が急に疼きだす。
高杉はクツクツと喉を鳴らしながら、間抜け面の銀時を睨み付ける。


「まだ江戸に居たのかよ、高杉」
 
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