novel

□対峙と接近
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「高杉晋助!」


期待通りのリアクションに高杉はニヤリと口元を吊り上げる。
そのまま高杉の左足が土方の股に割り込もうと、着物の上から押し当ててくる。
余りの高杉の性急な行動に顔を真っ赤に染めながら、必死で阻止しようとジタバタと抵抗するが、またその姿が高杉を煽る。
高杉の腕は力強く、土方の両腕を頭の上に一纏めにして押さえ込む。
空いた右手は土方の懐へと滑り込ませた。

「何のつもりだ!」
「あぁ、銀時が恋しいかぁ」

確かに俺は土方に一目惚れしてのかもしれない。
写真越しから覗く姿に胸がざわめき、欲しいと思った。しかし土方は銀時のモノになっていた。
無性にムカついた。
生まれてこの方、嫉妬なんてした事ねぇし、欲しいモノは無理やり手に入れていた。
しかし土方を前にして、俺の心臓がチクチク痛む。
だが俺が出来ることは壊すことしか、出来ないし知らない。
だから土方の心も体も全てを壊し、傷つければ、一生俺を忘れない。





屈折した想い…




体だけが先走ってゆく…





自傷気味にクツクツと喉を鳴らし、お互いの鼻が触れ合いそうな位置まで顔を近付けたかと思うと、高杉の唇は土方の顔を逸れ、首筋に吸い付いていった。
その一瞬の擦れ違いに、土方は高杉の瞳の奥から何か揺れ動くモノが見えた。
怒りや憎しみとは明らかに違う、青く弱々しく揺らめく炎のような瞳の色をしている。

なんだコイツは、悲しい瞳をしている…

土方の全身から自然と力が抜けてゆき、それとともに抵抗も無くなってゆく。
ただジッと高杉の姿を見つめた。
しかし高杉はその変化に気付かぬまま、飢えた獣の様に土方の肌を貪っている。
いつの間にやら押さえ込んでいた左手は外れ、着流しの裾をたくし上げ始めていた。








ふと、高杉の手が止まる。
自分の胸の上にヒヤリと冷たい手の平が置かれていた。
抵抗をいているのとは違う、そっと触れている白い手は、刀を握っている手とは思えない程に滑らかで細い指をしている。
すると頭の上から声が降ってきた。

「なぜ泣いているの?」

高杉の肩がビクリと震えた。
淡々とした声だが、高杉の心臓を射抜くほどの鋭い刃。

「お前のココは、まだ癒されることは無いのか?」

全力疾走した後のように心臓の鼓動が激しく波打つ。
土方に全てを見透かされている?
急に足の力が失せるような脱力感が全身を支配し、体をピクリとも動かす事が出来なくなっていた。
高杉は土方が発する次の言葉を待った。
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