頂乱

□恋次誕。
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【一護×恋次】



大切な人の特別な日。
どう演出しようか――。



俺は朝早く、浦原さんに頼んで穿界門を開けてもらった。目的は異界の恋人に逢うため。

到着した尸魂界の空はまだ紫色。その下を、俺は真っ直ぐ駆け抜ける。
門番や見回りの死神は俺の頭が見えたのか、引き止めることはしない。目立つ頭で良かった。
六番隊の前まで来て、脚を止める。こっからは静かに進まねえと、起こしちまったら可哀想だ。
目的地まで、何人もの隊士の部屋の前を慎重に進む。その更に奥にある部屋の前で深く息を吸い、入り口をそっと開けた。
意外にも部屋は静かで、彼が熟睡中と知れる。暑かったのか、掛け布団は無く寝巻きの浴衣ははだけ、眼のやり場に多少困る。

「恋次…」

起きないのは分かっているが、名前を呼んでみた。案の定、何の反応も示さない。
当分は起きないだろうと、横に寝てやろうとしたときだった。不意に恋次の眼が開かれた。

「…一護…?」

「悪ィ、起こしたか?」

「…何で居んだよ?」

「恋次の誕生日だから、一緒に過ごしたくて」

「……眠い」

「俺も寝て良いか?」

眼も閉じられ返事も無いから、寝たのかと思い勝手に横になった。そんな俺に、恋次が身体を寄せてくる。
可愛いっつの!思わず、ぐっと抱き寄せた。

「…暑ィよ」

「恋次が先に寄ってきたんだろ」

「…一護」

「何だよ?離さねえかんな」

「……ありがと」

そう言ってすぐ、恋次は規則正しい寝息を立て始める。言うだけ言って寝ちまった恋次に苦笑い。

「俺まだ、おめでとうって言ってねえんだけど」

起こすのも気が引けて、起きたら一番に言ってやろうと俺も瞼を下ろした。





「恋次、誕生日おめでとう」



31.August
HAPPY BIRTHDAY
Renji Abarai



‐END‐
『森と果汁』羽住
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