頂乱
□蒼空ストライド
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それはそれは抜けるような蒼空で、風に乗れば何処までも行けそうな位、その蒼は果てしなくて…。
《蒼空ストライド》
ポツンと真ん中に浮かべば、回りはただひたすらの蒼。
はぁ…と息をつけば、溶けてしまいそう。なんか、妙に幸せな気分。
何もない空間なのに、あったかくて…。身体を刻んだ闘いや、心を裂いた哀しさなんかわすれて、蒼空の小さな点になって…。
地上を背に、無限に拡がる蒼を見る。
あぁ此処に、あいつがいればな…。
どんなに遠くたって、見逃すはずはない。紅い紅いゴール。身体を起こして、足元の蒼を蹴る。
大きなストライドで蒼を蹴り続ける。
目指すのは、無限の先の愛しい紅い色。
「なにしてんだテメェ」
目の前に舞い降りた死神は、さながら天使のようで、蒼い空に悪目立ちする紅は小さく首を傾げた。
「ちょっと頑張ってる」
「なにを」
「言えねぇよ!!」
「あんだよ、教えろ!!」
「教えねぇ!!」
蒼い空を翔ぶように走る俺達は、きっと誰にも見えないから、2人っきりでこの空間を、目茶苦茶に疾走する。
自然に笑っちまうのは、隣に紅い死神がいるから。
ひとつのストライドは恋の距離。遠いけれど、たったひと蹴り。
大きなストライドで、お前に近づく。
「お〜い、いつまでやってんだぁ」
急停止して振り向けば、呆れたような顔の俺の天使。
その手を握り締めて『ゴール』と呟く。
軽く唇を合わせて…、そっと抱き寄せて…
誰も知らない蒼い空で、誰も見てない蒼い空で、俺達はふたりぽっちの点になる。