10/10の日記

18:21
誕生日 
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10月10日。

今日はナルトの誕生日だ。

まだ何も用意はしてないけど、ナルトに何をしてやろうかと考えるだけで俺のテンションは上がっていた。

朝、集合場所に行くと、ナルトの姿はまだ見当たらなかった。

先に来ていたサクラにいつも通り挨拶して、橋の手摺りに凭れてナルトを待つ。

その時、

「おはよー…」

やっと現れたナルト。

テンション低。

どうかしたのか、と俺が聞くより先にサクラが口を開いた。

「おはようって…アンタ朝から暗すぎ!!いつものウザイくらいのハイテンションはどーしたのよ?」

サクラの言葉に益々顔を曇らせ、唇を尖らせ、拗ねたようにテンションの低い理由を話しだす。

「だって…だってイルカ先生が今日任務があるから一緒に過ごせないって…」



…は??

俺とサクラは言葉を失った。

まるで恋人と過ごせない理由を切なそうに話す乙女のよう。

口から砂が出そうだ。

つーかイルカと過ごす予定だったのかよ!?

俺とは…?

ないか…。


「…そんな理由…?」

呆れたようなサクラの声に、ちょっとだけナルトがムッとして反抗する。

「だって…今日は、俺の誕生日なんだってばよ!!」

「そーだったの?それはおめでとー。だから何よ?」

明らかに心のこもってないサクラの祝福の言葉。
その後に続くキツい返し。

「…サクラちゃん冷たい。つーか覚えてくれてなかったの?」

「うん。興味なかったから」

「酷いってばよぉ…サスケの誕生日は知ってたくせにー!!」

「サスケくんは特別なの!!」

「オレ今メチャクチャ傷心してるってばよ…。誕生日なのに…」

「誕生日誕生日って煩い!!他に過ごしてくれそーな友達探しなさいよ!」

「サクラちゃんは??」

「今日は予定有りだから無理よ」

「そんなぁ〜…」

来た時より一層肩を落として俯くナルト。

薄ら涙目にすらなっている。

確かにサクラはちょっと酷いが、俺の事が眼中になさそうだった為、フォローを入れる気にはなれなかった。

でも珍しく弱々しいナルトが可愛くて、任務が終わったらそれとなく、一緒に過ごせる流れにしてみようと思った。

任務中もどこか集中力がなくてテンションの低いナルトに、そんなにイルカと過ごしたかったのかと思うと、少しムカつく。

だけど、1人で過ごす誕生日なんて誰も嬉しいはずないから。

この際ナルトの迷惑とか、俺のキャラとか考えずに、素直に祝ってやろうと決めた。

迷惑なはずないだろーし。
たぶん…。(弱気)

任務が終わってそれぞれ解散する。

相変わらずナルトの背中からは哀愁が漂っていた。

ホントはこの時にナルトに声をかけてもヨカッタんだが、俺は急いで自宅に帰った。
色々準備する為に。

準備が終わったら、今度は急いでナルトのアパートに向う。

途中で必要な物を買いながら。


ナルトの部屋の呼び鈴を鳴らすと中からバタバタと慌ただしく足音が響いて、ドアが開く。

俺を捕えた瞳が微かに輝いた。

「…サスケ!?どうし…」

どうしたと聞かれる前に少し強引に部屋の中へ入る。

ドアに引っ掛かる荷物を引っ張りながら「台所借りるぞ」とだけ断りを入れて、早速作業に取り掛かった。

「…何すんの?」

と、俺の行動を訝しがりながらも興味津々と言った表情でナルトが近付いてくる。

風呂上がりなのか、仄かに甘いシャンプーの香が鼻を掠めて、思わず鼓動が高鳴る。

可愛い。
可愛くてヤバイ。

「い…いから、あっちで待ってろって…」

何故か照れて、ナルトを追いやる時に声がどもった。(恥)

俺が何をしに来たのかよくわかってない感じのナルトは、張り切って「俺も手伝うってばょー♪」と腕まくりすらし始める。

いやいや、お前の為に飯作るんだよ!
お前が手伝ったら意味ねーだろーが。

と、思ったけど一緒に台所に立つとか…なんか新婚夫婦みたいだし、せっかく2人きりで過ごせる時間なんだから大事にしようと思って、そのままにした。

「じゃあナルトは野菜洗っていってくれ」

俺が頼むと「はぁーい!」とテンション高めに返事をし、流しの水を出し始める。

単純明快なナルトの性格は、見ていて飽きない。
俺が居る事を快く思っている事も丸分かりで、嬉しく感じる。

そーしてあっとゆう間に出来た、ご馳走と呼ぶにはちょっと雑な料理をテーブルの上に並べていく。

「厚切りチャーシューラーメーン♪♪♪美味そうだってばよー♪」

完全にいつもの調子のナルトを大人しく座らせると、さっき買ってきたばかりのメインを箱から取り出す。

そして決め台詞。


「ナルト…誕生日おめでとう」

「わぁ…ケーキだぁぁ!!」

目をキラキラと輝かせるナルトがマジで可愛い。

来てヨカッタと心から安堵する。

日が落ちた事で、電気を消せば丁度イイ暗さになった。

蝋燭に火を点けてナルトに消すように顎で合図する。

「ふ…ふぅーーー!!」

電気を点けて元の明るさに戻すと、ケーキを前にして俯くナルトの姿が目に入った。

俺は、どこか気分でも悪くなったのかと危惧し顔を覗き込んだ。

…泣いてる?

「ナルト…?」

名前を呼べば、涙を腕でグイグイと拭い満面の笑顔を向けてくれた。

「…へへ、ありがとうな!サスケ!すっげぇ嬉しいってばよ!」

遠くで、矢が胸に刺さる音が聞こえた。

プスッとな。プスッと。

なんだってそんなに俺を夢中にさせるんだよ。
お前は!
ドベのくせに…!

きっと赤くなってしまっているであろう顔を明後日の方に向けて、ナルトの頭をパフパフと撫でる。

そんな俺の手を取り、ナルトがとんでもない事を言いだした。

「…オレ、サスケの事イイ奴だってわかってたけど…今日また改めて優しくて本当にイイ奴だって思った。オレが誕生日なのに一人だって知って…飯作りに来てくれて、ケーキまで買って来て、くれて。…オレ…なんかサスケの事好きになってきたってばよ!」


サスケの事好きになってきたってばよ。

好きになってきたってばよ。
好きになってきたってばよ。
好きになってきたってばよ。

この言葉が頭の中で連呼する。

『好き』?

俺を…『好き』?

今度は、遠くから銃が撃ち込まれる音が聞こえた。

ズッキューーン。


ダメだ!ナルトの顔が上手く見れない。
熱い!顔が熱いー!!

「…サスケ??」

何も喋らない俺を不審に思ったのか、今度はナルトが俺の顔を覗き込んできた。

「ッ…!?」

近いっ!近いんだよウスラトンカチ!!

もう、我慢の限界が…


プツン。

何かが切れた音がした。

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