02/14の日記

09:54
一恋
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2月14日 土曜日 晴れ



今日は、バレンタインらしい。
クラスの連中が騒いでた。

んな事全く知らなかったけど。

やっぱり…甘いもんが大好物のアイツに渡すべきなのか?
とか学校から帰ってきて、1人考えてたら、家のインターホンが鳴った。

親父も遊子も夏梨も居なかったから、仕方なく来客を迎える。

居たのは井上。

珍しいなーとか思ったけど、外で話すのもなんだし、とりあえず家の中に呼ぼうとしたら。

いきなり、「コレ!!良かったら食べて!!」って。
綺麗にラッピングされた箱を渡された。
勢いで受け取る。
でも、何なのかよくわかんなかったから、聞き返そうとしたら、もう居なかった。

居なくなるの早過ぎだろ?
漫画じゃあるまいし。(いや、漫画だよ)

何でそんなに急いで帰んだ?
せっかく来たのに。
よくわかんねぇ。

で。受け取ったはいいけど。
コレってやっぱり…。

アレだよな?(誰に聞いてんだよ)

チョコレート…だったりすんのかな?
今日、そーゆー日だし?

って1人悶々と頭悩ましたりしてみる。
でも、考えてても埒明かねぇから。
ちょっと確かめたくて。
チャドとか石田も井上から何か貰ってたりすんのかと思って、電話で聞いてみた。

そしたら案の定、2人共チョコレート貰ってたらしい。
やっぱりな。
俺だけ、なワケねぇか。
微妙に切ない気持ちになるのは気のせいだよな?

安心した反面、少しだけ寂しさを覚えたのも嘘じゃなかった。

が!!!!

俺の本命はあの男なワケで。
アイツに誤解されるのだけは避けたかったから。
中身は確認しないまま、机の引き出しに突っ込んだ。

たぶん、チャドや石田が貰ったのと同じだろーし。
今の時期なら、ちょっとくらい置いといても腐ったりなんかしないだろーと思ったから。

軽く溜め息吐いて、ベッドに戻ろうと振り返ったら何かにぶつかる。

ぶつかったモノ。
それは俺よりちょっとガタイのイイ赤毛のバカ犬。

何で居る!?
いつの間に来たんだよ!?

驚く俺に構わず。
「何か匂う。」って呟きながら俺の体の匂いを嗅ぎ始めた恋次。
マジで犬か?

で、益々驚く一言。
「何か…甘い匂いすんぞ。お前何か食った?」って。
どんだけ鼻がイイんだよ。
俺、軽く動揺。
別に何も悪い事なんてしてないのに、冷や汗まで出てきた。
いっつも肝心な事には鈍感のくせに。
なんでこーゆー…
ちょっとだけ俺に後ろめたい事がある時に限って鼻が効くんだよ。コイツは!!

必死に平常心保ってたつもりなのに。
無意識に机の引き出し庇ってるのがバレたのか。
「お前…俺になんか隠してんだろ?」って言われて。
心臓が止まりそうな程、バクついた。
誤魔化したのに。
誤魔化し方が下手くそなのか…。
机の前から無理矢理退かされる。
あんまり必死に隠してても、後々良くない気がして。
仕方なく恋次のしたいようにさせたら。
引き出しを開けられた。
一番最初に目につくのは、当然井上から貰ったバレンタインちっくな箱なワケで。
それを取り出す恋次。

で、わかってて言ってんのかどうかわかんねぇけど。
「…コレ、何だ?」って。
まるで不倫、もしくは浮気がバレた男の心境に追い込むような言い草をする。
別に俺は何もしてねぇのに。
確かに、よく確認もせずに受け取っちまったけどよ。
俺だけにくれたワケじゃねぇし!!
義理だぜ!!義理!!
って、まだチョコレートかどうかもよくわかってねぇのに。
心の中で激しく言い訳をする。

もーちょっと男らしく構えてぇのに。
なんかダサくね?(汗)
こんな小せぇ箱一つにオドオドしてんじゃねぇよ。
ビシッと構えろ。俺。

って軽く1人の世界に入ってたら、勝手にラッピングを解こうとしてる赤毛バカ。

おいおいー!!!!
何勝手に開けようとしてんだよ!!
仮にも俺が貰ったもんだぞ。
人の物を許可なく開けようとするなんて躾のなってねー犬め!!
と、思って慌てて止める。
でもそれを拒まれる。
また止める。
拒まれる。
止める。
拒む。
止め…

暫し攻防。

の末。
勢い余って、箱が開いた。
出てきたのはハート型のチョコレート。
茶色の下地にピンクの文字で、でっかく『好き』って書いてあるのが、俺と恋次の目に、同時に映った。
そしてベッドの上にポトリ。と落ちる。
『好き』の文字を見せ付けるように。

言葉を失う俺。
恋次の顔を見て、益々固まる。
すっげ黒い。
すっげぇ黒い雰囲気でてる!!

名前呼んでも。
顔の前で手を振ってみても。
反応なくて。

とりあえずチョコレートしまった方がイイと思って。
手を伸ばしたら、恋次に阻まれた。
で、メッチャ睨まれて。
「食うのか?コレ食うのか!?」ってしつこく聞かれて。

俺は、首を振る事しかできなかった。

だって、恋次が軽く涙目だったから。
コレってヤキモチってやつか?
井上からチョコレート貰った事に嫉妬…してくれてんのか?

だとしたら…嬉しいかも。

って喜んだのも束の間。
「じゃぁ、俺が食っていい?」って何!?
チョコが食いたかっただけ!?
は!?
あの涙目も。
必死に箱を奪おうとしたのも。
全部チョコが食いたかっただけなのか!?

何だよソレ!!!!
ショック。
マジでショック。
力抜ける。

食いたきゃ食え。って言ってやったら、嬉しそうにガッツキやがって。
ムカつく。
俺よりチョコレートかよ。

ハートを半分に割って。
頬張る恋次。
口の周りにチョコ付けながら嬉しそうな顔しやがって。
可愛いけど、ムカつく。
一応俺が貰ったもんだし。
ただ食いたかっただけとか。
かなりムカつくんですけど。

何かゴチャゴチャ考えてたら、マジ腹立ってきたから、顔逸らして拗ねてみた。
そしたら。

「…んだよ。なぁに拗ねてんだ?こっち向けよ、一護…」
って言われて、眉間にシワ寄せながら恋次の方向いた。
刹那。
柔らかい感触が唇から伝わる。
キス。されたみたいだ。
触れ合った唇の間からチョコレートの味がした。

口移しでチョコレートを渡される。
余りにも突然のソレに驚く。

俺が固まってたら。
「俺以外からチョコレート貰って喜んでんじゃねぇぞ…俺の許可なく食えると思うなよ。」って…?
もしかして、全部知ってたのか?
聞く前に、また唇を塞がれた。
チョコレートを自分の口に入れては口内の温度で軽く溶かして、俺の口の中に流し込んでくる。

エッロ。
何コイツ。
やっぱ妬いてんじゃん。

なんだよ…
ばぁか。



その後は当然。
チョコレートなんかより甘くて苦い恋次を美味しく頂いたワケで。

嫉妬してる恋次はいつもに増して、煽ってくるし。
めちゃくちゃ乱れてくれやがった。

俺にはお前しか居ねぇわ。
マジで。

もー最高。





で、後日知ったんだけど…

井上から貰ったチョコレートは、チャドや石田のソレとは違っていたらしい。

マジかよ…?

でも、井上には悪いけど…

俺にはやっぱアイツしか居ねぇから。



って、正直に謝ったら。
知ってたらしい。

何で…?
誰にも言った覚えねぇのに。
ルキアか…?

それでも、自分の気持ちにケジメを着ける意味も含めて、渡したかったと微笑んだ井上を見て。

女は強ぇえなって思った。

出そうになった欲を止めて。
井上に、感謝して。

ヤキモチ妬きなアイツの元へ…。




ありがとう。


愛されるように


愛してる。



『milk chocolate』のような


癖になる甘さを秘めた恋に


溺れろ。








end。

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