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□夏祭り
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今日は街を挙げての夏祭りだ。
祭りの会場である公園からは既に祭囃子が絶え間なく続き、太鼓の小気味のいい音があたりに響いている。
星も綺麗な夜に、こんなに規模の大きい祭りが開かれるとあって、そこそこ広いはずの公園は人で溢れかえっていた。
そんな、絶好の祭り日和な今日、一人の少女が公園の前で待ち人来たらず、と頬を膨らしていた。
彼女の名は、ティア。
彼女もまた、この祭りを楽しもうと約束をしてこの公園に来たのだった。
そんな彼女のその整った容姿をあたりの男達が見逃すはずもない。
案の定というかなんというか、ティアは見知らぬ大勢の青年達に囲まれてしまっていた。

「君、可愛いねぇ? こんなところで一人でなにしてるの?暇ならちょっと付き合ってくれない?」
ニヤニヤしながらいわれた言葉に、当然ティアは顔をしかめる。
それにまた「怒った怒った」と、どこか楽しそうに哂いながら、バカみたいな騒ぎをしている。
「………あの……?」
不審に思って声を発せればそこにいた男達は更に厭らしい笑顔を浮かべてにやにやしながらティアに迫ってきた。
「一人なんでしょ? じゃあ俺らとイイコトしてあそぼうぜぇ?」
言っている意味は半分しかわからなかったがこんな人たちと一緒にいてはいけないという危険信号がティアの脳内を占めると、慣れない浴衣に下駄のまま、ティアはその輪を抜け出そうと試みた。
それにうひょ、とまた不可解な笑い方をして男達はティアに群がろうとする。
もうダメだ、と思った瞬間に彼女を助けたのは、常に共にいる、彼女の本当に大切な人。
「……ティアになにしてる。」
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