銀魂夢小説(短編)
□羨望
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「いのりが羨ましいッス!」
「どうして…?」
「晋助様はいのりの前ではとても穏やかな表情をするッス!あんな表情するのは、いのりに対してだけッスよ!」
力説しながら両肩を掴みガクガク揺らしてくるまた子。
興奮した彼女は力の加減というものがわからないらしく、いのりは頭を揺らしながら止めようとまた子の腕に手をかける。
「私は、昔からの知り合いだから」
村塾生のいのりは幼少期から高杉について回っていた。
家同士が近かったからというのも理由の1つかもしれない。
「アタシもあんな風に名前を呼ばれてみたいッスー!!」
「揺れる、揺れるよまた子、」
ぐわんぐわんと回る視界。
揺らされたと思えば、次には思いっきり抱きつかれ。
「でもいのりのこと好きッスから!!」
「…ありがとう?」
今のまた子に尾があるならば、きっとぶんぶん振り回しているかもしれない。
しかしそんな彼女達をべりっと引き離したのは第三者。
「晋助が呼んでいたでござるよ」
背中に感じる厚い胸板。
いのりは顔を上げ、サングラス奥の双眸とかち合った。
「邪魔しないでくださいッス万斉先輩!!」
いのりの身体を支える腕を解けば、彼女は万斉に一礼してすぐに踵を返す。
高杉が呼んでいる、ならば即向かう。
彼女の中で働いた思考はそれだけ。
「拙者だっていのりと接したいでござるが…晋助に斬られるのも勘弁でござるな」
「晋助様は、何用でいのりを?」
「祭りの下見でござろう」
それから約30分後、
仲睦まじそうに船から降りる2人の姿が見られたそうだ。
(いのりとお祭り行きたいッス!万斉先輩、晋助様と交渉しようッス!)
(怪我程度で済めば良いが…)←