銀魂夢小説(短編)

□食べたい
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「食べたいなー」

いつものように貼り付けた笑みで話しかけてきた神威。
その視線は他でもない彼女に向けられている。

「…お腹空いたの?」

「うん、すごく」

何か作ってほしいのだろうか。
しかし彼は相変わらずニコニコ笑って此方を見るだけ。
いのりが首を傾げる。

「…つく、ろうか?」

神威が笑う。

「俺が何を食べたいか、わかる?」

「…わからない」

はっきり言ってこの男は何でも胃袋に入れてしまいそうだ。
あの尋常ではない食べっぷりを目の当たりにしたことがあるいのりは、彼に差し入れを持っていく際は通常の5倍程の量にしている。

「俺が食べたいのはねー、」

ぐっ、と近付けた顔は互いの鼻先ぶつかりそうな距離。
咄嗟に身を引いた彼女は背中が壁に当たる硬い感触に目を丸くした。

「…神威、近い」

「あの男とはもっと近い距離にいるんでショ?」

サファイアの瞳が覗く。

「俺が食べたいのは、キミだよ」

ゴツンッ!!
鈍い音と衝撃が神威の頭に落とされた。

「このすっとこどっこい!人が折角仕事片付けてきたってのに真昼間から何やってんだ!」

「やぁ阿伏兎、今いいところだから邪魔しないで。殺しちゃうぞ☆」

「どっかの団長様が持つべき仕事を片してきた部下に対しての第一声がそれか!?」

阿伏兎の隻腕が神威の頭をもう一度小突く。
いのりの前から退いた神威の代わりに、彼がその隻腕を差し出した。

「うちの団長の不始末を許してくれ」

その手をとって立ち上がり、裾の乱れなどを直すいのりは2人を見比べ僅かに眉を寄せる。

「…用意、出来ないよ」

「ん…?」

居心地悪そうに視線をそらした彼女に、今度は2人の視線が向かう。
笑顔で先を促した神威。
いのりは重い口を開いた。

「…夜兎って、食人族だったんだ…」



(あー、そっちで捉えちゃったか)
(無垢な嬢ちゃんでオジサンよかったよ…)
 

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